擬人化小話
傍井木綿
三段変速チャーリー
出来る男、チャーリー。
三段変速ギアつき、暗くなったら自動点灯するLEDライト、通学にも便利なワイドサイズ荷物カゴ、と己は優秀なチャーリーであり、だからこそ新生活へ一歩踏み出す主人に選ばれやってきたはず。
しかしそれから七年、三段変速の能力を発揮し活躍する日々を夢見て七年。夢見るばかりで七年がたった。
出来る男だったはずのチャーリー。
三段変速ギアは揮わないまま三年を過ごし、埃と蜘蛛の巣に埋もれて四年が過ぎた。気のこもらない足では走ることもままならない。かけられたままの二重鍵は身じろぎも許さない。
そうして迎えた八年目。
「ねえ、またこれからよろしく頼むよ」
「……信用できません」
■点検
「チャーリー、走る度にぎゅうぎゅう言ってるけど大丈夫?」
「あんだけ放置されてたんですから走れなくなっててもおかしくないでしょう」
「だから点検連れてってやるんじゃんか」
「タイヤ交換にならないといいですね」
高いからね。
(点検中)
持ち主 「大学は県外に出てて、こっち帰ってきて久しぶりに乗る自転車なので」
チャーリー「ケッ」
自転車屋 「じゃあこっちで就職したの?」
持「あ、いや、その、就職決まらないまま帰ってきちゃ、ったので……就職活動中です……」
自「そうなのー?」
持「(あわわ)」
チ「ざまあみろ」
■買い物
「で、これ何ですか」
「農協の買い物」
「何で僕こんなんなってんですか」
「だって、ばあちゃん一人で重い荷物買い物してくるの不安じゃん」
「何か、農家のおばちゃんが乗るママチャリみたいな格好……」
「いいじゃん、似合ってるよ」
「足、蚊に食われてますよ」
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