燃えている人たち
@akaharatamori
第1話
あなたは人間が燃えている光景を見たことがありますか?
1.見たことない
2.見たことある
3.さっき見た
私の答えは、3の「さっき見た」だ。
しかも、燃えているのは一人だけではなかった。
何人もいたのだ。
燃えている人たちは、「う」「ううう」という呻き声を漏らしていたけれど、全然苦しそうにみえなかった。なんと、炎に包まれながら「直立し歩いていた」のだ。
炎の勢いはすさまじく、火柱がでているほどだったが、それでも中の人間は生きていたのだ。のろのろとした動きで、歩いていた。
私はというと、驚きで声を出すことができなかった。
学校からの下校中。
こんなことが起きていいはずがない。
起きるわけないことが起きている。
私は、目の前で起こっている状況が理解できなかった。
そして、私はそこから無言で逃げ出してしまった。
大通りだから誰かが救急車や警察を呼んでくれるだろう。私一人の力があったところでどうにもならない。私にできることなんて何もない。こういうのはプロの人たちに任せたほうがいいのだ。
その場から離れる間、そんな言い訳がぽんぽん出てきた。
――そして、今に至る。
私は走って家へとたどり着き、布団をかぶってぶるぶる震えていた。
先ほど見た地獄のような光景を頭の中から消し去りたい。
そう思うほど、さっきのことが思い出される。
燃えている人たちの茫然とした顔。焼けて落ちた皮膚。そこから覗く人間の内部。
そして、そこから逃げ出した自分への罪悪感。
叫びたくなった。
叫んでいる間だけ、忘れられるかもしれない。
いろいろな感情がぐちゃぐちゃだった。何をどう整理すればいいのかわからない。
何かを叫んだ。
何を言ったのか分からない。ただ、叫んだあと体が熱くなっていった。体の内側から体温が上がっていくのを感じる。温かいという感じではない。もはや熱いと言えるほどだった。
体が熱い。燃えるほどに。
先ほどまであった、私の「恐怖」や「罪悪感」が消えていく。たぶん、燃えて灰になったのだろう。私の中の炎はどんどん燃え広がっていく。
おそらくこの炎は私という存在すべてを燃やすまでは消えない。
すべてが溶けていくと感じた瞬間。
私の意識は無になった。
それは一瞬だった。真っ白の無が頭の中に一斉に広がっていった。
私は白い灰になったのだ。
その一瞬ののち、私は未来に飛ばされていた。
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