希望の珠

生き残った警官達が救急救命を始めた。


見るからに人手が足りないので、

里見は犬坂に電話し大阪城に侵入してきた警官達に応援要請をした。


犬坂「敵本拠地は富士山頂でした。」


里見「富士山?」


犬坂「山頂の立ち入り禁止場所、

おそらくそこに地下建造物でもあるんでしょう。」


里見「今から行く?」


犬坂「朝まで待って下さい。

あと、ぬりかべの事でわかってきた事が。」


里見「何?」


犬坂「おそらく建物に入れない。乗り物もたぶん。あと昼も。

なので富士山には異星人UFOで行ってもらうつもりです。」


里見「わかった」


里見は電話を切った。

母の事を伝える事は出来なかった。慰められたら戦えない。


地下大阪城の治療室へ向かう前に両断した髭切を回収する。

他に忘れ物は無いが、母の亡骸を見ずに出ていくか悩んでいる。


見てもいい事は無いが、形見となる物を探したかった。


無心で出入口に向かうと落ちている閃光人形を見つけた。

拾おうとしたが、人形がひらりと茨木童子の方へ飛んでいく。


回収しようとして追いかけると死体の前まで来てしまった。

死んでいる茨木童子に対して不発状態の人形を回収すると、

手の中で輝き始めた。


とっさに握りしめて光をさえぎる。

光が収まると人形は珠に変わっていた。


「真」の珠


右のポケットに仕舞い、通信指令室を出る。


階段を下りるのが辛い。

そういえば珠転送できるかもと思い犬坂の元へ転送を試みる。


里見「ただいま」


犬坂「おお、おかえり」


里見「新しい珠が出たよ」


犬坂「まさかそれで転送を?」


里見「できちゃった」


犬坂「やりましたね。さあ、とりあえずその傷を治してきてください」


里見「転送できるし、父の村雨で治しちゃダメ?」


犬坂「負傷したままネーバ星に行くのはおすすめできません。

焦らないで大丈夫です、まだ犬士に犠牲者は出ていないはず。」


里見「!」

悲しい現実に里見の表情が凍りついた。


何か察した犬坂の目が潤む。

それに釣られて里見は泣きそうになり下を向いた。

もう一言もしゃべれない。


「浜路正月さんは殉職しました」

伏姫が現れ、

里見に血の付いた手錠を差し出した。


伏姫「形見です。」

戦士が泣いては戦えない。ならば今泣いておいた方がいい。

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