琵琶湖編7 合戦
吹っ飛んだ犬神に、酒呑童子が投げた燃える木が突き刺さる。
酒呑童子の薙ぎ払いは一周目は地面を削るほど低く重い。
二周目は地面を削らず早かった。
三周目で投げた木をすかさず追う酒呑童子。
■
睡眠毒は火事で消えた。
自衛隊は犬神の暴走に乗って、攻めるしかなかった。
城北から南下を始める。
酒呑童子は銃声に気付くと、犬神追撃を止めて北上していく。
鬼残党と合流し、装甲車両に木や石を投げて抵抗を始めた。
河童も無限に湧き、岸から攻め上がる。銃弾の盾にもなる。
鬼は負傷しても金棒を持っていれば回復する。
徐々に鬼が前線を押し返し始めた。
特に酒呑童子の投げる石は車両や建物を確実に破壊していく。
■
犬神は燃える木の下敷き状態から脱すると、戦局を見据えた。
自衛隊の旗色が悪い、特に酒呑童子の戦果がすさまじい。
陽動する必要があると判断し、北上することにした。
なぎなたで河童や鬼を襲っては逃げる。
犬神の挟み撃ちで自衛隊が少し持ち直す。
すると酒呑童子はなぜか戦線を離脱し、太閤井戸へ向かった。
井戸の酒を浴びるように飲み干していく。
酒呑童子の巨体が更に大きく、いや際限なく大きくなっていく。
10mを軽く超える巨人、ハイパー酒呑童子。
酒呑童子は河童を掴むと自衛隊に投げつけ始めた。
岸に沿って河童を掴んでは投げ、掴んでは投げ。
闇夜に降り注ぐ河童の雨。
現代兵器は白兵戦に向いておらず、自衛隊は混乱して行く。
絶妙な大きさの酒呑童子は、現代コンクリート建ての長浜城を盾に、
色々投げつけ続けた。城の石垣などは格好の投石物でもある。
犬神が金剛力で燃え盛る木を酒呑童子に投げようとする。
乙姫『もうやめてください、勝ち目無いです』
犬神も拠点封印後は逃げるつもりだった。
しかし長浜城と彦根城が近い。
彦根城攻略の犬塚に迷惑を掛けたくなかった。
彦根城の雷鳴は犬坂をも参戦させる程の苦戦に思えた。
早く彦根城応援に行きたいが、
酒呑童子を放っておけば自衛隊は壊滅し、後ろから挟み撃ちされる。
思えば犬神の実家道場は古くからの合戦武術を伝承している。
一人で戦うのではなく、玉砕してでも致命傷を与える事も習う。
純粋な殺人術に反則は無く、金的、目潰しなど初手から急所を狙う技を。
現代では無意味な技の数々を習った。
酒呑童子は巨大だが裸同然ではある。一矢報いれば、あるいは。
ここが正念場と判断した。
燃える大木を大きく上に投げ上げる。
確かな大きさの木が、酒呑童子に当たった時には枝に見えた。
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