琵琶湖編7 合戦

吹っ飛んだ犬神に、酒呑童子が投げた燃える木が突き刺さる。


酒呑童子の薙ぎ払いは一周目は地面を削るほど低く重い。

二周目は地面を削らず早かった。

三周目で投げた木をすかさず追う酒呑童子。



睡眠毒は火事で消えた。

自衛隊は犬神の暴走に乗って、攻めるしかなかった。

城北から南下を始める。


酒呑童子は銃声に気付くと、犬神追撃を止めて北上していく。

鬼残党と合流し、装甲車両に木や石を投げて抵抗を始めた。

河童も無限に湧き、岸から攻め上がる。銃弾の盾にもなる。

鬼は負傷しても金棒を持っていれば回復する。


徐々に鬼が前線を押し返し始めた。

特に酒呑童子の投げる石は車両や建物を確実に破壊していく。



犬神は燃える木の下敷き状態から脱すると、戦局を見据えた。

自衛隊の旗色が悪い、特に酒呑童子の戦果がすさまじい。


陽動する必要があると判断し、北上することにした。

なぎなたで河童や鬼を襲っては逃げる。

犬神の挟み撃ちで自衛隊が少し持ち直す。


すると酒呑童子はなぜか戦線を離脱し、太閤井戸へ向かった。

井戸の酒を浴びるように飲み干していく。

酒呑童子の巨体が更に大きく、いや際限なく大きくなっていく。


10mを軽く超える巨人、ハイパー酒呑童子。


酒呑童子は河童を掴むと自衛隊に投げつけ始めた。

岸に沿って河童を掴んでは投げ、掴んでは投げ。

闇夜に降り注ぐ河童の雨。

現代兵器は白兵戦に向いておらず、自衛隊は混乱して行く。


絶妙な大きさの酒呑童子は、現代コンクリート建ての長浜城を盾に、

色々投げつけ続けた。城の石垣などは格好の投石物でもある。


犬神が金剛力で燃え盛る木を酒呑童子に投げようとする。

乙姫『もうやめてください、勝ち目無いです』


犬神も拠点封印後は逃げるつもりだった。


しかし長浜城と彦根城が近い。

彦根城攻略の犬塚に迷惑を掛けたくなかった。

彦根城の雷鳴は犬坂をも参戦させる程の苦戦に思えた。

早く彦根城応援に行きたいが、

酒呑童子を放っておけば自衛隊は壊滅し、後ろから挟み撃ちされる。


思えば犬神の実家道場は古くからの合戦武術を伝承している。

一人で戦うのではなく、玉砕してでも致命傷を与える事も習う。

純粋な殺人術に反則は無く、金的、目潰しなど初手から急所を狙う技を。

現代では無意味な技の数々を習った。


酒呑童子は巨大だが裸同然ではある。一矢報いれば、あるいは。

ここが正念場と判断した。


燃える大木を大きく上に投げ上げる。

確かな大きさの木が、酒呑童子に当たった時には枝に見えた。

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