夢の少女

勝利だギューちゃん

第1話

「ここはどこ?」

「夢の中よ」

「夢の中?」

「うん、君の夢の中・・・」

「で、君は?」

「私・・・?」

「うん」

「私は・・・ね・・・」


ジリリリリ


目覚ましの音で、起こされた。

いつも、このタイミングで起こされる。


ここのところ、毎日あの子の夢を見る。

どこのだれかは、わからない。

多分、会った事はない。


会話は覚えている。

いつも同じ内容だ。

でも、顔だけは思い出せない。

女の子である事は、確か・・・


クラスに夢占いに詳しい人がいる。

今日、聞いてみよう。


学校についた。

その人は、学校でも有名な夢占いについては、詳しい知識がある。

学校中から来る。


女の子だが、かなりがめつく金をせびる。

ポイントカードも作っていて、10ポイント貯めたら、ひとつただで占ってくれる。


商売上手なのか、ケチなのか・・・


しかし、気になって仕方のない僕は、その子に聞いてみる事にした。

いくらか訊いてみたら、「初見だから、ただでいいよ」とのことだ。

案外いい子かもと思ったが、

「次からは、1回1000円ね」だと・・・

(「高校生の金銭感覚を、なめんな」と、悪態をついたが、言葉には出していない)


で、夢の内容を教えた。

なるべく詳しく・・・ていうか、顔以外は覚えているのだが・・・


その子はしばらく考えて・・・


「君は今、毎日の生活に飽き飽きしているね」

「えっ」

「そして、刺激や変化を奥底から求めている。その女の子は、君をその願いを叶えてくれるわ」

「本当に?」

「うん、でもね、君自身が動かないと、始まらないよ」

「僕自身が?」

「そんな君に、この言葉を贈ります」

「何?」


【下を見るんじゃなくて、手の届かないくらいの高みを見上げるわけ。

自分もあそこまで行こうっていう心構えを持たないと、人間は堕落する一方なんだからね! 】


涼宮ハ○ヒですか・・・

でも、当たっているかもしれない。


目標は高く持たないと、人間はダメになる。

そう思う。


その夜も夢を見た。

いつもと同じ、あの子の夢を・・・


「やあ、今日は元気そうだね」

「ああ、いろいろあってね」

「で、私に何か、言いたい事があるんでしょ」

「わかる?」

「うん、ずっと見ているもん」

僕は、一呼吸置いてから、口を開いた。


「僕は、君をお手本にする」

「えっ?」

「おそらく君は、僕が作りだした目標を具現化した存在だ」

「具現化?」

「顔が見えないのは、まだおぼろげ。名前を訊けないのは、まだ努力が足りないため。

そして・・・」

「そして?」

僕は、最後の一言を言葉にした。


「君は待っていてくれている。僕が夢を叶えるまで・・・

今は無理だが、君に近づいた時、その時は全てを明かしてくれる」

正直、殆ど願望もあったが、僕にはこれしか言えなかった。


「うん、正解だよ。でも90点」

「90点?」

「程んど、君の憶測通りだけどね、マイナス10点もあるんだ」

「その10点は?」

「私が名前を教えないのは、既に君が私の事を知っているから」

「えっ?」

「わからない?」

わかるはずがない。会った事はないんだから・・・


「ううん、毎日会ってるよ。昨日も、お話したじゃない」

「どこで?」

「学校で・・・私に訊いたでしょ?夢占い・・・」

「まさか・・・」

その瞬間、その子の顔がはっきり見えた。


「やあ、元気?」

「君は・・・夢占いの・・・」

「うん、君のクラスメイトの、夢野らな・・・驚いた?」

「うん」

驚かないはずが無い。


「私ね、ずっと君の事を、応援してたんだよ」

「ウソ」

「やはり、男の子は鈍感だね、気付いてほしくて夢の中にまで来たのに」

「じゃあ、夢占いは?」

「君への答えは、私が君の夢を覗いた結果」

詐欺ですか・・・


「でも、誤解しないでね。他の人は夢の中を覗いていないから・・・」

その子は、手を差し伸べてきた。


「さあ、行こう。あの空高くにある、君の目標まで・・・」

「目標?」

「努力は君次第、でも、そばで応援はするから・・・」

「らな・・・さん」


【人生を語るのは、往生する3秒前。それまでは、進み続けようね。

君なら、出来るから】


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

夢の少女 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る