百合の花に生まれて
@SchwarzeKatzeSince2018
第1話
私は百合の花……。
それ以外に名前はありません。
隣に芽生えた、同じ百合の花……。
私より先に芽生えた、お姉さま。
そんなお姉さまに、焦がれる私……。
背も私よりも大きくて……奇麗なお姉さま。
もう、つぼみも付けていて……。
私は、お姉さまに問いかける。
「私もお姉さまのように、なれるかしら?」
お姉さまは、優しく私に言う。
「貴女の方が、きっと立派になるわよ?」
その一言でも、微笑みを浮かべるお姉さまの姿が焼き付く。
「そんな……。私のあこがれはお姉さんなんです!」
私は照れながら、お姉さまに反論する。
そんな私に、お姉さまは言う。
「そうね……まだつぼみも小さいけど……。
そのうち大きくなるわよ?」
「本当に?」
「私の言うことが信じられない?」
お姉さまは、優しい笑顔で、意地悪な質問をしてくる。
「お姉さまが、そう言うのであれば……」
私は、おずおずと答える。
「うふふ。可愛いわね」
「え!?」
「私、貴女のそういうところが好きよ?」
なんだか、とても恥ずかしくなる私……。
「すっ、好き……ですか?」
「そうよ? 好きよ?」
優しく、微笑むお姉さま。
そして……。
お姉さまのつぼみは、大きくなり……。
花を咲かせた。
やっぱり、お姉さまきれい……。
私の花は、まだ先になりそう。
「お姉さま……きれいです…。」
「ありがとう」
微笑んで、お姉さまが答える。
花を咲かせたから……私には、お姉さまが輝いて見えた。
「貴女のつぼみも、もう少しね」
「え?」
「ほら、つぼみの先が、色づいてきてるじゃない?」
私のつぼみを見直す。
本当に、色づいている。
「うふふ。貴女がどんな花を咲かせるか、楽しみだわ」
「……期待しないでください……。」
私は、照れて伏せる。
「……やっぱり、可愛らしいわ。そういうところ、好きよ?」
「か、からかわないでください!」
「その姿も可愛らしいわ」
「!?」
私は何も言い返せなくなった。
そして……。
私のつぼみも大きくなった、雨の日。
「そろそろ、咲くころね。楽しみだわ」
「……とても恥ずかしいです」
私のつぼみの中……どんな花が眠ってるんだろう?
期待と不安に、押しつぶされそうになる。
ひた、ひたと、私のつぼみを、雨が刺激する。
「ひゃっ!?」
「力を抜いて? 雨水に身をゆだねて?」
「こっ……こうですか?」
「うん……いい感じよ?」
私は、雨水の刺激に耐えながら、ゆっくりと身をゆだねる。
「その調子よ……」
「ひっ、ひやぁ……。」
「我慢して? もう少しよ?」
雨水の刺激に耐え切れず……。
私の花は、ぱあっと開いた。
「うん……きれいよ……。」
お姉さまは、澄み切った声で……。
そして、優しく微笑んで、言った。
---完---
百合の花に生まれて @SchwarzeKatzeSince2018
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