第105話 大地の匂い(春香6泊目)
優衣さんの朝ぷはぁを堪能し、無事に優衣さんを会社に送り出した。
今俺は、授業を無事に終えて、家でバイトの時間まで部屋の掃除や洗濯などをしていた。
ふとスマートフォンの通知が光っているのに気が付き、画面をタップして開くと、春香からメッセージが届いていた。
『今日もあんたの家行くね』
そっけないものの、端的に書かれている文言を見て、俺はどうしようかと首を捻る。そして、簡潔かつ申し訳なくメッセージを送る。
『ごめん、今日バイトで夜遅いんだよね……』
俺がそう返すと、すぐに既読が付いて返信が返ってきた。
『大丈夫』
いや、何が大丈夫なんだよ……
俺がそう返事をしようとした時だった。
「ピンポーン」
俺の部屋のインターフォンが鳴る。
「はーい」
俺はスマホを手に持ちながら玄関へと向かい、ドアをガチャリと開けた。
するとそこにいたのは、今連絡と取りあっていた張本人だった。
「大丈夫、もう大地の家に来ちゃったから」
返信の内容の続きを開口一番にニコっと放ちながら、春香が手を挙げて挨拶を交わしてきた。
「いやっ、何も大丈夫じゃないだろ……」
「なんで? 大地が帰ってくるまで家にいてあげるって言ってんじゃん」
「はい?」
予想外の答えに思わず口をポカンと開けて呆けてしまう。
「だから、バイト終わるまで大地の家で待っててあげるって言ってるの! 夕食も作ってあげるし。なんなら掃除もしておいてあげるから」
当たり前のように言ってのける春香。君はホームヘルパーさんか何か?
まあでも、そこまでしてもらえるなら俺に断る理由などない。
「まあ、お前がそれでもいいなら構わないけど……」
「そ、じゃあそいういうことで決まりね! あ、食材は勝手に使わせてもらうよ~」
そう言いながら、自分の家へ上がるかのように、さっさと玄関で靴を脱いでガツガツと家に侵入してきた。
「あ、ってか今掃除終わったし、夜メシいらないわ」
「え、なんで?」
「バイトでまかないでるから」
「あぁ……バイトって新しいほうのバイト?」
「そうそう、この間から始めた方」
「あんたも忙しいよね。ま、いいけど。何時ごろ帰ってくるの?」
「早くて10時30分とかかなぁ……」
「そ、じゃあそれまで適当に家で過ごしてる」
「おう、わかった」
俺が返事を返すと、春香はそのまま部屋の隅に畳んである布団にダイブして動かなくなってしまった。というかスカートのまま無防備な……
春香のスカートがはだけ、見えそうで見えない下着に、綺麗なすらりとした白い健康的な脚が伸びていて、思わずまじまじと観察してしまう。
しばらくして、ふと視線を壁の掛け時計に向けると、時刻は16時を過ぎていた。
「うわっ、ヤベっ遅刻しそう! 悪い春香、俺は行くけど留守番よろしくな!」
「は~い」
春香は手だけで振って俺を送り出す。
俺はそんな春香をよそ目に、玄関で靴を履き、駆け足でバイトへと向かった。
◇
大地がアルバイトに行ってしまい、静観な時間が続いていた。
私は布団にうずくまったまま「う~」っと唸っていた。
どうして私が来るのわかってたくせに、バイトなんで入れてんのよバカ大地。
火曜日は毎週泊りに行くって言ったじゃん……このこのこのぉ!
私は大地の寝ている布団をボフボフっと叩いた、すると埃が舞い上がるのと共に大地の安心するようないい匂いが……じゃなくて!
はぁ……もっと大地と一緒にいたいのに、早く帰って来てくれないかなぁ~。
私は大地の部屋で、一人寂しく彼の帰ってくるまで待ちぼうけを食らうことになってしまった。
◇
布団に埋まりながらスマホでゲームやSNSをした後、夕食を食べ終えてすぐにシャワーを浴びた私は、ついに手持ち無沙汰になり、大地の布団を敷いて寝る支度を済ませてしまう。
来客用の布団敷くの面倒だからいっか、一緒に寝れば。べっ……別に一緒に寝たいとかそんなことは思ってないんだからね。
自分の中でそう自問しつつ、机の上にあったリモコンを手に取って、テレビをつける。敷いた布団の上に座りながらぼおっとバラエティー番組を視聴して時間が経つのを待つ。
バラエティー番組のエンドロール流れ、テレビの後ろの壁に掛かっている掛け時計を見ると、時刻は午後8時前。まだ大地が帰ってくるまで2時間以上もある。
「あ~もう! 暇だよぉ!! 大地早く帰って来て!」
テレビを消してリモコンを放り投げながら、私は布団に転がってじたばた手足を動かして駄々をこねた。
「はぁ……」
だが、そんなことをしている自分が虚しくなって来て、思わずため息が漏れてしまう。
すると、バタバタ暴れたためか、再び布団から大地のいい匂いがフワっと漂ってきた。
「大地……」
私はさらに虚しさが増してしまい、毛布を捲って布団の中へ芋虫のように包まった。
布団の中に入ると、大地の匂いが私の身体全体を包み込んでくれるような感覚に陥る。
思わずクンクンと布団や毛布の匂いを嗅いだ。あぁ……大地の安心する匂いだ。でも、大地は今いないんだよね……う~なにこの感じ、寂しいよぉぉ~!!
もっと大地にいっぱいギュっとして頭撫でてほしいな……
気が付けばそんなことを思いながら、私は自分の胸を抱いていた。
「あっ……ダメェ……」
ダメなのにぃ……もっと大地にポンポンしてほしいよぉぉ。もっといっぱい私のことギュってしてほしいよ!!
私の身体は火照って息は荒く、甘い吐息が漏れてしまっている。
気が付けば、自分の抱いていた胸を自分の手で揉んでいる。
私……大地がいないところで、大地の布団の中で大地の匂いを嗅ぎながら気持ちいいことしちゃってるよ……ダメなのに……ダメなのに……止まらないよぉぉ~!!!
もう止めることは出来なかった、私の手はついにズボンの中に侵入し、下着の上から秘部を擦っていた。
元はといえば、大地のせいだ。大地がバイトなんて入れて私を部屋で一人で待ちぼうけさせるからいけないんだ!
「大地……大地ぃ……早く帰って来てぇ~」
そんな甘ったるい独り言をつぶやき、かすれた甘い吐息を出しながら、私は没頭していった。
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