しんきょくらいぶ
第13話 Promise
ガタガタ……
ガタガタ……
ぼく達は、マーゲイさんの所に向かう途中、ロバさんの駆る「ジャパリバスV-2カスタム」に拾ってもらった
バスの名前はかばんさんが付けたんだって
ロバさんは、とても覚えるのが上手で、このバスの扱い方もすぐに覚えたんだそう
滑らかなハンドル裁きで快適!
「かばんちゃんは、とーってもすごいんだよ!!」
「すっごーいッッ!!」
いや、普通に凄いと思う
前に使っていた「ロバのパンヤ」の看板はそのままに、色が黄色で、サーバルさんっぽいぶち模様が施されている
これは、ロバさんの説明だったんだけど、改造前よりも中は大きくなってて、調理機材なんかもちょっとお古な感じは受けるけど、しっかり直されている
こんなのに、「味がある」って言うのかな?
そして、お手入れが行き届いてどこでも美味しいものをみんなに出してあげられる
そんなわくわくするバスだ!
ぼく達のメンバーの他にも
「あ、トキ!」
「始めまして、私はトキ……サーバルは、久しぶりって処ね……元気してたかしら?」
「パフィンちゃんでーす!ぽりぽり……」
「た、タヌキです……!」
「よろしくね!」
引き続き、ルルさんは着いてくる事になった
なんでも、お友達が先に行っているらしく、予め現場で合流する事にしてるからなんだって
さっきの今、やっぱりとても心配みたいで
「ヌーちゃん、無事かな……」
「ルルさん、きっと大丈夫だよ!」
「だと、良いな……」
「ほら、笑って?ね?」
「う、うん……あはは……」
空返事、愛想笑いのルルさん……ぼくだって空元気でも出しておかなくちゃやってられない……
キキッー!
「うわぁ!?」
突然、バスは急に横滑りを起こし止まってしまった!
「ちょっとロバ!どうしたのよ!?」
「あ、ごめんなさい!道の真ん中に……」
「あー、ごめん、ちょっとあたし話着けてくるわ……」
「わたしも行く!」
「あ、待ってー!」
バスを降り、ちょっとばかり歩くとそこに居たのは……?
「出たわね!おじゃまリアン!!」
「フハハッッ!ってカラカルどの!それ処では無いで御座る!!」
「またなによ……!?」
「風の噂では、この先の広場にて、何か起こると、聴いておる。拙者達も向かう途中だったので御座る。一人より二人、三人より四人!頭数は多い方が良かろう?」
「じゃあ、あのバスで一緒に行こうよ!」
「サーバル!?……そうね……それよりレッド、他の子達は?」
「もう、すでに彼処!」
「なんですってぇ!?」
「ねぇ、カラカルさん?」
ぼくはふと、聞いてみた
「おじゃまリアンと仲悪いの……?」
「別に仲が悪いわけでは無いにて候ゥ」
「まーね」
「……コレしてくれないと拙者達、なかなか調子が出ないにて候ゥ」
「いつもの事ね。こんにちはの代わりかしら?なんだかんだで助けてもらってんのよ。色々と……」
風の吹くまま気の向くまま、今日もふらり旅なおじゃまリアン一行
一通り悶着?が終わった処でぼく達はまたバスに乗り込んだ
「いやー、セキちゃんはさぁ!」
「コケッー!?恥ずかしいですわぁ!!」
「えぇー?」
バスの中は賑やか!
↑←→↑↓↓↓↑↓←→↑↓←A+A
それからしばらくお喋りを楽しんでいた
浮かない顔をしていたルルさんもちょっと笑ってくれたりしてほっと一安心
「着きましたぁ」
「ありがとう!」
降りるときに、ロバさんから予め聞いてた下ろしたりするものを下ろし
「わたしは、準備とか色々ありますのでー」
「分かったわ、また後でね」
「はいー!」
ぼく達を降ろしてくれた所はどうやら裏側みたい
少し見回してみると、あれの影響からか、施設が崩れていたりしている……
「サーバルさん!」
「あ、マーゲイ!」
サーバルさんのお知り合いみたい
眼鏡がキリリと決まった出で立ちのこの方がマーゲイさんだと教えてもらった
ぼくも挨拶を手短に済ませ、お手伝いする事になった
元々、この「ライブステージ」はペパプと呼ばれる方々が集まってくれたみんなの為に歌ったり、踊ったり、一緒に楽しむ「イベント」をやる場所だと教えてくれた
かつて、たくさんのヒトがここに遊びに来ていた時期が有って、その時の資料をキョウシュウ地方に有るコノハ博士達の「としょかん」から調べ上げペパプを結成したと
今は三代目なんだって
もしかすると、何かヒントが有るかもしれない……
お家がここには無いと理解ってはいるけど、まだ引っ掛かるものがあるからね……
「マーゲイ、あっち大分良い感じよ!」
「分かりました!……でも、ごめんなさい……」
「なんで、マーゲイが謝ってるんだよ!……ってその子達は誰だ?」
「あ、始めまして、ぼくはキュルルって言います」
「へぇ、素敵な名前だね。私はペパプのリーダー、コウテイペンギン、みんなからはコウテイって呼ばれてる。よろしく!」
まぁ、ややこしくなるのは面倒だったから「お家をさがしてる」って体で一応自己紹介
「じゃあ、おまえもかばんと同じ、ヒトなんだな!よろしく頼むぜ!!」
全身から弾け出るロックを感じるイワトビペンギンのイワビーさん
そして、ロイヤルペンギンの「プリンセスさん」と紹介が有った
今は、別の作業に当たっているのんびり屋さんなフンボルトペンギンの「フルルさん」におしとやかなジェンツーペンギンの「ジェーンさん」の五人で構成されているのが……
「ペンギンズパフォーマンスユニット!略してペパプよ!!」
「おお!凄い!!」
「マーゲイハ、モノマネガトッテモトクイナンダ!」
「あら、ボス。では、あなたも?」
「すわ、あなたもって?」
マーゲイさんは腕に付けらたボスを見せてくれた
ボスはボスで会話していて、「調子どう?」「まあまあかな?」な内容
「お話が有りますので、少し、良いですか……?」
「はい……」
ぼくの処のメンバーはもう、他のみんなのお手伝いに行ったみたい
遠くを見ると、観客席や広場にはたくさんのフレンズさんやセルリアンさん達が物を運んだりしているのが見えた
そろそろお昼時かな?
太陽がもうすぐ真上に来る
そんな時間になっていた
荒れてしまって居るにも関わらず、活気に満ち溢れている
←→↑↓←→↑↓↓↑↓↑↓←→B
ぼくは「控え室」って場所に居る
普段はここで歌や踊りの練習をしているみたい
「お待たせしました!」
椅子とテーブルが有って、そこに座らせてもらった
と、同時に重い表情になるマーゲイさん……
「これは、博士から聞いたんですが、このジャパリに危機が訪れるらしいんです……それがいつなのか、分からないのですが……」
そこで、急拵えではあるものの、かばんさんの手によってリミッターが解かれたボスを、その「群れ」と呼ばれるチームのまとめ役に渡るようにしている真っ最中だと説明が有る
元々、何らかの理由でフレンズさん達とお話をしちゃいけなかったボス
リミッターと呼ばれる「縛り」を解除するのは難航を極めたそうだけど、かばんさんが「マザーコンピューター」にハッキングを仕掛けると言う難しい事をして、細い針の穴に糸を通すような突破口を見つけ出す事に成功
かばんさん、コノハ博士、ミミ助手は「三賢士」と呼ばれてるそう
あまりにも難しすぎてぼくにはなんの事だかさーっぱり
だけど、あまりにも物事が急過ぎる、ロバさんのジャパリバス、そして今……
ぼくは一体、どれくらい?
なんだか、よく解んなくなってきちゃった……
「マーゲイさん、一旦外の空気吸ってきても良いかな?」
「そうですね、わたしも一気にしゃべったものですから……」
なんて事は無いんだけど、時々こうして扉に手を掛ける時は、色々な事を考えてしまう事があって、「今、夢の中なんじゃないかな?」って思ってしまう事がこれからも有るかもしれない
だけど、温度を感じる手を通して「今は夢の中じゃない」って思う事にしてる
「キュルルさん、どうしました?」
「ううん……何でもないよ。ごめんね」
扉からはやっぱり、入って来た時と大体同じ温度を感じる事が出来る
「やっぱり、キュルルさん何か変です……どこか具合でも良くないんですか?……あ、いえ!大丈夫ならそれで良いんです!わたしこそ変なこと言っちゃって、ごめんなさい……」
「いえ……」
外は、入ってきた時と変わらずの景色が目の前には有る
ここは裏側
今の処、誰も来る気配は無い……
ぼくは、少しばかり遠目に空を眺め
「キュルル?」
「わあっ!?ってカラカルさん!」
すとんっ!としなやかに、カラカルさんが文字通り「降ってきた」んだ!
「あぁ、ごめんごめん、別に驚かそうってワケじゃないのよ……はい、これ!あ、マーゲイの分もね」
「カラカルさん、ありがとう」
「ありがとうございます!」
渡してもらったのは、ロバさんの新作「森の恵みたっぷりピザ」
「はやいとこ、食べないと冷めちゃうわよ?……んじゃ、あたしまた戻るから。あんた達も早いとこ戻って来なさいよ?」
「うん!」
立ったままなのもアレだったからまた中へと
「……とすると、今のキュルルさん、あなたは自身が夢の中かどうか……確信が持てない、と……」
確かに手に残る感触、肌で感じる温度、それは確かなのは理解る
でも、それは本当なのか、それとも……
「どう言った事情が有ったのかは、聞かないでおきます。ですが、こんなわたしでも一つだけ言える事が有るんです」
「……」
少しの間を挟み、マーゲイさんは……
「自分を信じるんです。それが出来ないと、誰かを信じる事。それすら出来なくなるものなんですよ。最初も、最後もやっぱり信じてあげられるのは自分自身なのですから」
「マーゲイさん、ありがとう……」
「あなたには、サーバルさんや、カラカルさん、そしてボスが着いて居るじゃないですか!困ったときは先ずはお話してみると良いんじゃないでしょうか?」
「キュルル、イマキミガミテイルコウケイハゲンジツソノモノ、コレハホショウデキル!ボク、キヅイテアゲラレナクテゴメンネ……」
「ううん、いいんだ……」
その後、マーゲイさんは色々お話してくれた
ペパプを結成する切っ掛けの事だったり、毎回どうすれば面白くて楽しい催しに出来るか、それらをやるには毎度一筋縄で行かなかった苦労話とか
でも、その度にみんなが引っ張ってくれたと、感慨深く話す
「ま、マーゲイさん!?」
「あぁっ!わたしとした事がっ!?」
後半に差し掛かった処でかなりエキサイトしてたみたい
じわりじわり滲み出る「朱」を上品に拭うマーゲイさん……
「ん、んん……失礼……後、これはちょっとした情報なんですけど、来てくれた子からこんな事を小耳に挟みまして……」
「ほぅ……?」
なんと、マーゲイさんこの先に今は定かでは無いけど「ヒト」が生活していた様な痕跡を色濃く残す場所があると教えてくれた
ちなみに情報元は「ナイショ」なんだとか
「なるほど……」
そのまま、「タダ」ってのはなんか悪い気がものすんごくするから、お手伝いが終わったら教えてもらう事になった
↑↓↑↓↓↓←→↑↓←→B
「おーい!サーバルさーん!」
「あ、キュルルちゃん!こっちこっちー!!」
ぼくも大分遅くなったけど、お手伝いに参加!
しかし、サーバルさんは色使いもあるけどその中でも群を抜いてキャラが濃いからか、遠目でも一目でどこに居るかがハッキリと分かる
なんとなく磁石っぽいと改めて思う……
カラカルさんを始めとする様々な「色とりどり」、フレンズさんのたくさん混ざって楽しげな色!
そこに、お手伝いに加わってくれてるセルリアンの方々も色とりどり!
青を基調とした、もうすぐ夕方を迎えようとするオレンジの入り始めた薄いスクリーンが掛かる
「せーのっ!!」
どぉんっ!
みんなでタイミングを合わせて、くくりつけた縄を引っ張って大きな柱を立てた
これが立った事で大分目処がついた!
↓←→↑↓↓←→↑↓←→↑↓A+A
もう、後少しで終わりが近付いてきた時
「わたし、今回のライブやりたいんです。先ほど、あなたに言った事、覚えてますか?」
作業をしながらお話……
「うん、自分を信じろ。だよね」
「あの言葉、実はわたし自身、迷いもありまして渇を入れる為でもあったんです」
「そうだったんですね……」
崩れてしまっていたライブステージ
みんなのお手伝いの甲斐もあり、バラバラになっていた時と違って、きちんとした形に
完成?までは近い……
「この日を楽しみにしていた方の為に、こんな事でくじけちゃ、ダメだと解りました!」
明かりを照すための装置や、スピーカー等は使えなくなってしまったみたいだけど……
「今まで、数多くの方々に支えてもらったお陰でペパプは存在し続ける事が出来たとわたしは思ってます」
だから今回はあまりやったことの無い、「参加型」のライブをやってみたいと、マーゲイさんは力強く話す
「マーゲイなんだかうれしそうだねー?」
「へ?そうですか?」
そんなこんなしてる内に、ペパプのみんなが集まって来た!
「そろそろ私たち練習に入っても良いかしら?」
「もう、終わりそうだぜ?」
「みなさん、有り難うございます!」
「これは最近プリンセスと話したんだけど、マーゲイさん、ごめんよりも有り難うが増えてる感じがして私、本当に嬉しいよ!」
「うう……わたし……」
「マーゲイさん!?」
しばらく声が出てなかった
だけど……?
「はぅあっ!?」
「良かった、いつものマーゲイさんだ。……あ、ごめん、やっぱり多めかも……」
コウテイさん曰く、「出具合」で調子がなんとなく解るんだとか
「控え室に寝かせたら、お知らせは私達がやるから、あなた達もゆっくりしてなさいね?」
ライブは明日のお昼頃やるらしい
と、言うわけで……!
「おかえり、キュルル」
ぼくは再び、カラカルさん、サーバルさんと合流
控え室でマーゲイさんと話した事を共有
「これから、今までよりも注意しなくちゃね」
かばんさんにも、ボスを通してお話してみると「今の処は目立った変化が無いですけど……何かあったらまた連絡しますね!サーバルちゃんを宜しくお願いしますね?」と
今日は、みんな離れ離れで作業に当たっていたからカラカルさん側、サーバルさん側とも話題に欠く事は無い
もちろん、美味しい晩御飯も添えて……
しかし、このピザとジャパリソーダの組み合わせは、悪魔的な旨さを誇る組み合わせだと個人的に思った
こってりした味に、スカッとしたのど越し……
「すいすい入っちゃうよ!」
もちろん、ぼくとカラカルさんも同じ感想で同じタイミングで首を縦に振る
「あはは!仲良いね!」
「……ッッ!!」
「ぼくは、嬉しいな」
「もう!あんたまでなによぉ……!!」
「あいたたた!!ごめんごめん!!」
怒らせてしまったみたい……
「にゃにっ!?」
サーバルさん、上手いことかわしてるらしい……
「みんみぃ……ッッ!」
「カラカルっ!」
「そのわたしはっ!」
「残像だよっ!」
「なんとぉ!サーバルさんが四人!?わけが分からないよ!?」
サーバルさんがぐーるぐる……
ぐーるぐる……
「みんみ……」
考えるのではなく、感じる……
そのうちぼくは考えるのをやめた
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「ふぅー……」
「キュルル、今日はたくさん頑張ったからあんたもう休みなさい…」
「でも……」
「大丈夫よ、あたし夜行性だし。なんかあったら起こすから」
お月様も、昇った処でもうそろそろ眠くなってきて……?
ぼくは怖かった
昼間、マーゲイさんと話をしたことをカラカルさんに話す
「あ……」
「ほら、分かるでしょ……?」
「うん」
あの時してくれた事をもう一度……
「これが生きてるって事なのよ?夢の中じゃ、こうはいかないはずよ」
柔らかな鼓動を感じる……
ぼくも空いた片手を自分の胸に当て、確かめるように……
「確かに、あんたは最初逢った時に比べて強くなったわ。だけど、たまにはこうして話して欲しいものなのよ……?心配してるのは、サーバルや、ボスだけじゃない」
「カラカルさん……」
「あ、そうそう。そろそろそのさん付け、やめにしない?」
「どうして?」
「なんか、よそよそしくて……ね?いいでしょ?」
「……分かったよ」
それからぼくは、目を閉じた
意識の遠くで声がする……
「心配しないで、明日はちゃんと来るわ……」
暗闇に身を委ねる、だけどその空間は冷たくなくて、暖かい
おやすみ、カラカル……
しゅっぱつしんこー!ジャパリパーク!!
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