すてきなおうち

第5話 ミナミメリカーエンダーヨ!  

 ぼく達を乗せたボスレールはゆっくり走る


 次の場所までは、まだかなり距離があるみたいで、朝からずっと止まってない

 そして、もうそろそろ夕方、実は夜はぼくにとってもう一つのお楽しみの時間だったりする


 「ねぇ、ボス、次はどんなとこ?」


 「……」


 「ねぇ!いじわるしないで答えてよー!」

 「サーバルさん、まだ時間じゃないと思う。もう一度ぼく、聞いてみるね?」

 

 すると……

 

 「ツギハ、アメリカーエンデス、オキャクサマ、ソトヲゴランクダサイ!」


 「うわぁ……!ねぇ、ボスあれはなに?」

 「アレハ……サボテントイッテ、アメリカーエンニシカナイメズラシイショクブツダヨトゲニハキヲツケテネ?……ア、アワワワワ!!!」

 「ぼ、ボス!ごめんね!!?」

 「あーあー、ぼく達はなーんにも聞こえてないよー!」


 「アワワワワ……」

  

 お昼は、少しだけボスとお喋りできた  

 どうやらあの時間は、ぼくにだけお話をしてくれるみたい

 カラカルさんとサーバルさんがお話したい時は、ぼくが間に入る形でのお話をしたんだ


 時々、さっきみたいにしちゃうこともあったけどね

 誰かに怒られちゃうのかな……


 「次の場所はどんなとこ?」

 「ここなんだけど?って、カラカルさん近いよ!?」

 「いいじゃない別に、あたし、あんまり目がよくないのよねー」

 「うみゃ?キュルルちゃん、これはなに?」

 

 背景は夜、大きめの星が所々に散りばめられていて、建物?のようなものが描いてある


 そんな絵


 「キラキラしてるね!」

 「綺麗だけどなんだろう?」

 「多分だけどこれ……街?なんじゃないかなぁ?」

 「まち?」

 「うん、建物がたくさん有って、ヒトのお家もいっぱいあるところだよ」

 「え……?」

 「じゃあ……キュルルちゃんのおうちも?」

 「もしかしたらあるかも?」

 「ほんと!?」

 「なーんだ……だとしたら案外簡単だったわね……」

 「カラカルなんだか寂しそう……」

 「べ、別に?ただ……なんか物足りないって思っただけよ……もう少し位……、な、何でもないわよ……」


 そんな、やり取りをしていると……


 「クソウ!!……ア……イマノハキカナカッタコトニシテクレナイカナ!?」


 急にボスレールが止まってしまった!!


 「ねぇ!見て!!」


 「サーバルさん、どうしたの」


 前を見てみると……?



    

   線路が……ないっ……ッッ!!!! 




 呆然と立ち尽くすぼく達……


 「キュルル、カラカル、サーバル……ゴメンネ……」

 「どうしてボスが謝るのさ!」

 「ダッテ、コレジャアサキニススメナイヨ……」

 「キュルルちゃんカラカル、何か方法を考えよ?」

 「それもそうね……」


 ぼく達は先に進みたい、でもそうすればボスを置き去りにしてしまう事になる……

 それに、ここから下まではとても高くて、どう動けば良いのかぼくは答えが見つからなかった


 「……キュルル、カラカル、サーバル、イイカイ?ヨクキクンダ」


 「?」


 「イマ、ボクノナカマガコッチニムカッテイル。ソノコニアンナイヲタクスコトニシタヨ。コレシキノコトデトマッチャダメダヨ!」


 「でも、それじゃ……」


 「サーバル、キミタチナラキットデキルサ!ソレニ、ボクノコトナラシンパイナイヨ!!」


 「……行くわよ」

 「カラカルさん、ボスも……」

 「キュルル、あんた、ボスの気持ち無駄にするつもり?」

 「そういう訳じゃ……」 

 「サーバル、飛び降りるわよ!」

 「……良いよ!」

 「カラカルさんサーバルさん!やめて!!ケガしちゃうよ!?」

 「じゃあ!どうしろって言うのよ!!」


 下を睨むカラカルさんを、ぼくは止める事は出来ない……!!

 

 「ボス」

 「ナンダイ?」

 「ありがとう、また会いましょう」

 「……カラカル」


 「……サーバル、キュルルを受け止めるから一緒に先降りるわよ!!」

 「まかせて!うみゃー!!」


 ……行ってしまった


 「キュルル」 


 「ボス、こんなお別れになってしまって、ごめんね、悔しいよ……」


 「キミノキモチハヨクワカル、ソレハボクモイッショサ。デキルコトナラサイゴマデイッショニイタカッタヨ……デモネ?キミタチハ、イキテイル。コンナトコロデトマッテチャイケナインダ!……チョットオシャベリシスギチャッタネ、サァ、イクンダ!!」


 「ボス、さよなら……じゃなくて、行ってくるね!ここまで、案内……ありがとう!!」


 「ウン、キヲツケテネ!イッテラッシャイ!!」



  ↑←→↑←→↑↓←→↑A


 「来たわよ!」

 「バッチリ決めるよ!カラカルっ!!」


 あたしには、確信がある!

 サーバル、この子、普段からおっちょこちょいで、どこか抜けてて、ほっとけない子なんだけど、決めるとこだけはしっかりと決める何かだけは確実に持っているの

 それに、噂に聴く、「アレ」試してみるにはちょーどいいわ……形にさえ、なれば御の字ね


 「行くわよ!サーバル!!」

 「うんっ!」




        発動!


    なかよしけもリンクっ!!




  「いっけー!カラカルーっ!!」


 聴いた噂、誰が言ったか聴いたかそんなの覚えてないんだけど、ピンチになった時に使う事が出来る奥義のようなものらしいわ

 それが、誰と出来るとか詳しい事は分かんないけど、なぜだかこの子、「サーバル」となら出来る

 そんな根拠のない自信のような、そんなのがある


 あたしのジャンプするタイミングに、これ以上無い程のジャストで合わせて来た瞬間、「成功」以外の道は消えた


 「キュルル!!」

 

 あー、やっぱり怖いのね、それは仕方ない事よ……


 きっと、こんな高さから飛び降りるだなんて、この子の表情みたらすぐ分かるもの


 「掴まえた!!」

 「……カラカルさんっ……!」

 「大丈夫よ、怯えないで?」


 ここから下まで、一体何個じゃぱりまんを積み上げたら良いのかしら?

 まー、後はサーバルにお任せするわ……落ちてる時に感じる風の感触は結構、気持ちいいものね……


 「……どっせい!!」


 受け止めてくれた衝撃があたし達を襲う!

 

 「……ナイスサーバル!!」

 「ケガはない?」

 「大丈夫よ、あんたの事、信じてたから」


 サーバルにだっこ、そう、お姫様だっこ


 覗きこみ、あたし達に微笑んでくれるサーバル

 それは、あたしの知らないサーバル

 見なかった間に、あなたはとても変わった……

 サーバルキャットのサーバル……

 

 「みんみ……」

 

 あ、そこは変わんないのね……

 

 そして、キュルルも無事みたい


 「サーバルさん……」

 「……」


       すっごーい!


 「うみゃあ!!?」


 ぼくは吠えた

 それは、天高くまで響き渡るよう、ありったけの力を込めて

 髪の毛一本?

 ううん、そんなものなんかじゃない


 ぼくを作っている、細胞、いや、原子、その全てから発する渾身の「すっごーい!」なんだ!


 「サーバルさん、身体なんともない?」

 「えっへん!大丈夫だよ!!」


 地面が大きく抉れてるから、ぼく達を受け止めた時の衝撃は、想像を絶するものなのは、簡単に解る


 二人は、力強い表情でハイタッチを決めた


 「ヤァ、アミーガ!コンバンハ!ダーヨ!」

 「あ、ボス!」

 「ジョリーロジャーカラハナシハキイテイルーヨ!ミナミメリカーエンノガイドハ、ボクニマカセテーネ!!」 

 「わたしは、サーバル!」

 「カラカルよ」

 「ヨロシクーネ!」


 「ボス、わたしたちとしゃべって平気なの?」

 「……コマカイコトハキニシチャイケナイーヨ!」


 黄色のボスがぼく達をお迎えしてくれた

 別れたボスとの違いは、大きな帽子と、背中に何かを担いでいる


 「よろしくね、ボス!」


 「サッソクダケド、スケッチブックヲミセテクレナイカーナ?」

 「分かった」

 「スキャンカイシ……」


 もしかしたら、ぼくのお家を探すヒントが見付かるかも?


 「ケンサクシュウリョウ」

 「どうかな……?」

 「チカクニニテイルバショガアルーヨ!イッテミヨーヨ!」


 「やったぁ!」

 

 「キュルル」

 「なぁに?」

 「見付かると、良いわね……」


 この旅は、ぼくのお家が見付かるとおしまい

 心のどこかでは、まだ終わりたくない、だなんて、変なこと考えている……


 →↑↓←→↑↓←→↑←→B


 「この辺、なんだかあたし達が住んでる所とちょっと似てるわね?」


 カラカルさんとサーバルさんは、さばんなちほーって場所に普段は暮らしていて雰囲気はこんな、乾いた土地に、高い背の草原、低い木が所々にある

 そんな感じなんだって


 「ミナミメリカーエンデハ、リャノ、トヨバレテルーヨ」


 「へぇーそうなんだ!」


 と、遠くには、ぼく達よりも背丈のある茶色の岩みたいなのがある


 「ねぇ、ボス?あれは何かな?」

 「アレハ、アリヅカトイッテ、シロアリガスンデイルオウチダーヨ!」

 「おっきいー!」


 「キュルル、ココガキミノスケッチブックニカイテアッタバショダーヨ!」


 「ここは、街じゃないし、絵と全然違う気がするんだけど……?」


 「まー、残念だったわね、キュルル」

 「そうだーね」

 「あ、ボスのそれ、伝染ってるわーよ!」

 「あはは!おもしろいーよ!!」


 まぁ、気楽にやろうと思う

 その内見付かるんじゃないかな?


 「あれぇ?サーバルさん!それにカラカルさんじゃないですか!」

 「アードウルフ!こんなところで逢うなんて!」

 「いやぁ、奇遇ですねぇ!」

 「カラカルさん、知り合い?」

 「うん、住んでる所が近いの」

 

 「始めまして!えっとぉ……」

 「この子は、キュルルよ、おうちを探すお手伝いしてたの」

 「おうち?」

 「巣とかナワバリみたいなものよ」


 「そうだったんですかぁ、私も住む場所探してるんですけど、なかなか良い処、見付からなくてぇ……」

 「だからって、遠くまで来すぎでしょ!?」

 「でもここって、私達が住んでいた所となんとなく似てるし、それにここに来れば良い巣をたくさん知ってる方が居るそうなんでぇ」


     「そのとおり!!」

 

      誰だ……ッッ!!


 振り返ると、そこに居たのは…… 


 「良い巣の情報ならこの、アリツカゲラにお任せ下さいっ!」

 

 「あなたが噂の?」


 「ええ!私自身、色んな所に巣を創るのが得意でして、色んな物件をご紹介したり、後、ロッジの経営なんかもしてますよ!」


 「へぇ!凄いんですねぇ!」


 「そこのあなた!」

 「へ?ぼく?」

 「あなたも巣を探してるんですか?」

 「えぇ……まぁ……」

 「この、アリツカゲラにお任せ下さい!ダイ!ジョーブ!!きっとあなたにピッタリの巣を見つけます!!」

 「はぁ……」


 「ま、ついていってみましょ、色んな巣が見れるはずだし……」

 「そうだね」


 多分、アリツカゲラさん好きなんだろうな……なかなかのハイテンションっぷり!


 「では、皆さん!素敵な巣を探しに出発しんこー!」


        おー!


 あ、僕空気だーよ……


 ←→↑←→↑↓←→↑←B+B


 もうすぐ夜が来る

 薄暗い森の中で、アリツカゲラさんを先頭に、お家を案内してもらってる真っ最中


 アードウルフさんは、前に誰かが住んでいたお家の方が落ち着くんだって

 他には、外敵から身を守れるのが良いってアリツカゲラさんにリクエストしていた


 「わっかりました!丁度良い物件、有りますよ!!」

 「ホントですかぁ!」

 「えぇ!この間まで、キゴシツルスドリさんが住んでいた所なんですけど……」


 眺めは最高とのことらしいんだけど、ちょっと揺れるみたい……

 近くには、スズメバチの巣があると言うなんともデンジャラスな物件!


 「べ、別の所も、見てみたいよね!アードウルフさんっ!!」

 「そ、そうですね!!」


 「では、今度はもっと大きくて迫力満点の場所をご紹介します!!」


 それからまた歩いて、登って……


 「どーですかー!迫力満点でしょう!この滝ィッッ!!」

 「すっごーい!!?」

 

 サーバルさん、目の前、ホントに目の前の滝を見ての感想

 ぼくも同じかな

 

 オオムジアマツバメさんが前に住んでいたそう

 お家から出たり、帰って来る時は「ちょっと」濡れるんだとか

 そして、滑りやすい!


 アリツカゲラさん、なかなかにエクストリームな物件をご存知で……


 アードウルフさん、ここも「ちょっと……」だった


 そして、またまた歩く森の中


 次は、ナミチスイコウモリさんが住んでいた所

       きひひ……


 「うわ!びっくりした!!」

 

 どこ、どこかな!!


 上……?


 「きひひ……わーたし、だよ……」


       「!!?」


 「わたしは、ナミチスイコウモリ……ここに何か用?」

 「これは、大変失礼しました!まだお住まいになっていたとは……」

 「いいの、これからわたし、食事にしようと思ってたんだ。良かったらみんなも一緒にどう?」


 ここで、相談した結果、アードウルフさんとアリツカゲラさんとは別れる事に


 「アードウルフ、すてきなおうち、見付かると良いね!」

 「はい!」


 ぼくもだけど、カラカルさんとサーバルさんも朝から何も食べてなくて……

 

 「もう、あたし、おなかぺこぺこー……」

 「わたしも……」


 「じゃぱりまん、取ってくるから待ってて……えっと、ひぃ、ふぅ、みぃ、……三名ね」


 と、言うわけで、ご馳走になる事になった!


 「どんなじゃぱりまんかな?楽しみだね!!」

 「サーバルさん、ぼくも楽しみだよ!!」


 程無くして……


 「おーまーたせー!中身は……と、何が入ってるか……それは、食べてからのお楽しみだよ……?きひひ……」


 闇鍋ならぬ、闇じゃぱりまん!

 

 みんなで、木の根元に腰かけて


      いただきます!


 「ぼくのは、ピザ味みたいだ!」

 「ふふふ……当たりだよ……」


 「ちょっと!変なの混ぜて無いでしょうね!?」

 「大丈夫……まぁ、食べてみて?きひひ……」


 新鮮なトマト、程よく酸味があり、薫るオレガノ……ピザだけかと思いきや!?


 「キュルル、ナカミヲコレトクミアワセテミテーネ!」

 「いただきます……」


 どこからか、トルティーヤを一枚……

 そっとレタスも添えられ、ピザ風味のタコスと化した!!

 「ドウカーナ?」

 「Delectamenti!!」

 「ヤッターネ!!」


 タコスは、辛いソースが付いてる事が多いけど、これは、なかなかに新鮮!!


 ちなみに、中身はみんなおんなじだったみたいで、ボスからトルティーヤを受け取り、半分はじゃぱりまんとして、もう半分はそんな食べ方で楽しんだ

 ナミチスイコウモリさんは、特にトマトが大好きみたいでトマトソースをマシマシにしていた


 「ここで、一曲良いかしら?」


 ご馳走様をしたところで、ナミチスイコウモリさん、お歌を披露してくれる事になった


 「ナミチスイコウモリ、コレツカエーヨ」

 「お?ありがとう」


 背中に背負っていたのは楽器で、時々ボスも一人の時は練習しているんだって


 ちょっと、調節をして吟い出した……


 「時が経つのは、早いもので……」


 その詩は、出逢いと別れ、そして、新たな旅立ちを歌ったものだった

 

 「ごせーちょー、ありがとう!」


 「あれ……?おかしいな……?」

 「サーバル、あんまり無理しない方が良いわよ……?」


 カラカルさんはそっと、サーバルさんに寄り添い、一言……

 我慢していたのかもしれない

 それは、堰を切ったかのように……


 ↑↓←→↑←→↑↓←→A+A+B


 「……すてきなおうたを、ありがとう……!!」

 「いえいえ、どういたしまして。それじゃ、わたし、出掛けるね、また一緒に遊びましょ?きひひ……」 


 ナミチスイコウモリさん。なんとも、不思議な方だった……


 「ヒトめぇ!遂に見付けたぞぉっ!!」

 「大人しく我々に着いて来るのです!!」


 「えぇっ!?」


 「なんなの!?あんたたち!!」

 

 「わたしは、オオアルマジロのオルマー、そして、こっちはオオセンザンコウのセンちゃん!」


 「私達は、ある依頼主から探し出して連れてくるように頼まれているんです!」


 「詳しい事は、後で話すからとりあえず一緒に来て?」


 「待って!あんた達、何者か知らないけどさすがに勝手すぎるんじゃないの?」


 「もしかして、私達の邪魔をする気ですか!?」

 「ならば、相手になってやる!」


 うわぁ……なんだか、面倒なことに成ってきた……



 しゅっぱつしんこー!ジャパリパーク!!


 


 


 

 

   


 


 


 


 


 


 

 


 

 

 

 

 


 


 


 


  

 



 

 

 

 


 

   


 


  

 


 


 

 

 

 

 

    


 


 


 


 


 


 

 

 

 

 

 


 


 


  

 

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