俺だよ、俺。前作の主人公だよ! \ハンバーグ!!/
ちびまるフォイ
2作目は1作目をけして超えられない
「ふぅ~~。相変わらず、ここも変わらねぇな」
「あの……」
「あの建物もまだ残ってるとはなぁ。
あそこのじいさん、まだ元気にやってるかねぇ」
「あの、あなたは?」
「俺?」
「はい」
「わからない?」
「だから聞いてるんです」
「俺だよ、俺。ほら、わかるだろ?」
「前 作 の 主 人 公 だ よ!!」
男は自身を指さして言いのけた。
「ぜ、前作……」
「まぁ、完結してからここに来るのも久しぶりだからな。
でもほとんど変わってなくて、帰ってきたって感じするわ―ー」
「はぁ」
「ほら、お前は今作の主人公だろ?
最初だからいろいろわからないだろうからなんでも聞いてくれよ」
「なんでもと言われても……」
「っあ~~! あれか! まだこの世界に来てまもないから
なにがわからないかをわからないって感じか! わかるわ~~!
俺もそうだったから! 俺も、そうだった、から!!」
前作主人公は目をキラキラさせている。
大型犬だったらしっぽも振っていたことだろう。
「それじゃ、迷惑かけちゃいけないんで僕はこれで……」
「ステイステイ。まぁ、待てよ。
前作で主人公だった俺からのアドバイスくらい聞いたほうが
ぜったいためになるだろ」
「そうですけど、僕が今作の主人公ですし
なんでもかんでも頼ってしまったら自立してないというか」
「っかぁ~~! そういうのね! わかるわかる。
でも、ほらこの世界って結構物騒だから油断すると即死だぜ?
強がるこないだろ? な? なーー?」
「……話したいんですか?」
「バッカ。そんなわけないだろーー?
ほら、言うても俺前作の主人公だし、今作でまだよちよち歩きの
かわいい後輩を助けてやりたいってボランティア精神だよ」
今作の主人公は「こいつめんどくさい」とハッキリ感じ取った。
それは読者と今作主人公の心がリンクした瞬間だった。
「前作と今作で世界観のつながりはあるかもですけど、
僕は僕なりに今作をしっかりとまっとうしたいんで」
これには前作主人公の顔がわかりやすく不機嫌になった。
「お前なにいってんの。前作主人公の俺がいるだけで
ある意味でお前はもう主人公じゃないんだよ」
「えっ?」
「たしかにお前が今作の主人公かもしれないけどよ、
ファンは結局、前作の主人公のがいいに決まってるだろ!」
「そんなのわからないじゃないですか!」
「最初にでた主人公のほうが印象に残るんだよ!
まして同じ世界感なんだから、今作のお前は所詮二番煎じなんだよ!」
「にばっ……」
今作主人公は言葉をなくしてしまった。
「ポッと出のお前よりも、なじみの前作主人公の俺がいいに決まってる。
新しくできた友達よりも、地元の親友をみんな求めるんだよ」
「……ん?」
落ち込んで地面にひざをついた前作主人公はそこに1枚の紙を見つけた。
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『魔法学園の電磁機獣』の作成中止について
この度、公開予定だった上記作品は公開中止となりました。
つきましては『魔法学園の電磁騎獣R』として
新たにスタートしたいと思います。
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「これは……。待てよ? 今作は「R」だから、
それじゃそもそも前作は公開されてないってことか?」
今作『魔法学園の電磁騎獣R』がそのことに気づくや、
未公開でお蔵入りになっていた前作主人公は顔が青くなった。
「それじゃ、あんたは前作主人公で読者になじみ深いどころか
そもそも誰も知らないただのイチキャラってことか!」
「あばばば……」
「なーにが前作主人公だ! ここも変わってないだ!
なにが地元の親友を求める、だ!
最初からあんたは"誰だこいつ"って状態だったんだよ!」
「で、でも、こんな俺を好きになってくれる人もいるはずだ!」
「いるか! そん先輩きどりの勘違い男なんか好かれるもんか!」
「わからないだろ!」
「わかる!」
言い合いを続けたとき、スモークの中からまた別の人がやってきた。
「おいおい君たち、なにを見苦しいことをしているんだい?」
「お前だれだよ!」
「そうだ! 今はどっちが主人公としてふさわしいか話してたんだ!」
出てきた男は首を横に振った。
「君たちは何をいっているんだい」
「「 なんだと? 」」
「これはもともと私のスピンオフ作品じゃないか。
主人公もなにも、本流の主人公は私に決まっているだろう?」
俺だよ、俺。前作の主人公だよ! \ハンバーグ!!/ ちびまるフォイ @firestorage
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