第2話 部活に入ってしまった……
俺は学校でボッチだ。
ボッチとは憐みの対象とされたり、カースト最底辺などと言われているが、個人の意見として言わせてもらえば悪いとは思わない。
中学の頃は途中から友達もいたが、休憩時間になると常に話す。
休日は遊び尽くす。
傍から見れば羨ましいと思われるかもしれないが、リア充な人生がめんどくさくてしょうがなかった。
本があればそれだけで良かった。
周りから見れば調子乗んなと言われるかもしれないが、しょうがない。これが俺だからだ。
完璧な結論を出した俺は高校では誰とも話さずボッチだ。
小説の様に明るい幼馴染も三年生までいたが、三年生の頃、親が離婚してそれから引っ越して疎遠になり明るい幼馴染なんてものもいない。
朝起きる際には美少女が起こしに来るなんて小説展開も存在しない普通なボッチの高校二年生だ。
……だった筈なんだけどな。
「それこっちに持って来て」
「オッケー!」
キャピキャピと話しながら違う教室から扱っていなかった机を持って入る二人の金髪の女。
「ちょっと!吉条も手伝ってよ!」
………ほんとどうしてこうなった。
◇◇
本を落として、相当テンションが下がっていた。
絶対にあの時だ。昨日助けた金髪を許さない。
今後はどれだけ美少女が叫ぼうと泣いても絶対に助けないと心に誓う。
絶望し苛つく気持ちを抑えながら教室に入る。
教室には先日助けた金髪の二人もいたがリア充のような男達と後ろで仲良く喋っていた。
あいつら昨日あんな目にあったが明るい様子だ。だが、昨日知らない人呼ばわりした金髪の方は少し一歩身体を引いて話している。
やはり昨日不良猪絡まれた怖さが残っているのだろう。
多少は警戒心があることに少なからず感心し、昨日と同じ目には遭わないために対処方法を考えてくれることを祈ろう。
……まあ、俺には関係ない話だがな。
背後にいる金髪二人を遠目に見つめながら自分の席に座る。
毎日のルーティンである朝礼の前までイヤホンして周りの雑音を消して、本に没頭するのだが今日はその本がない。
……マジで金髪許すまじ。
金髪に怨念を抱いていると、背後から声が聞こえる。
「ねえねえ」
これ俺に言ってるわけじゃなさそうだ。俺の名前はねえねえではない。
俺の思い過ごしだ。
中学の頃にこんな出来事がある。
『ねえねえ』
『どうした?』
『え?あ、ごめん。こっちの子に話しかけたんだけど……ごめんね?』
あの時のごめんねがこの世で一番傷ついたかもしれない。
挙句の果てにそれを近くの男に見られ、当分の間は勘違いの広と言われるようになったのを今でも黒歴史として覚えている。
二度も同じへまをするほどの馬鹿ではない。
同じ過ちは犯すつもりはない。
「ねえ。ねえてば!」
「痛い!」
誰に話しかけているのか分からない背後の人物はスパンと良い音を奏でながら頭を叩く。
何故、叩かれなければならない?
うん、無暗に人を叩くのはよろしくない。
本が無いのも相まって苛立ちを隠さずに恨めしい目を作りながら背後を振り返ると昨日助けた金髪の二人だった。
「呼んでるんだから返事しなさいよ!」
何だこいつ。昨日助けたときにはあんまり分からなかったが、ツンデレが似合いそうな奴だな。
そう思いながらも口にしたらどうなるか分かったもんじゃないので言わないでおく。
「俺に言われると思っていなかったんだ。それよりどうした?」
早く要件を聞きたい。なんか周りからとても見られている。
この二人は美人で相当目立つ。
反対にずっと高校入ってからボッチだった男がリア充最高峰と話しているという事件が起こればそれは俺でも見てしまうだろう。
正直に言うと要件を聞かずに今すぐ立ち去ってほしいぐらいだ。
目立つ行動何て噂が立つだけで何一つ良い事など無いからな。
「昨日もお礼を言ったけど改めてお礼を言おうと思ったのよ。ありがと」
そう言ってもう一人もお辞儀してお礼を言った。
「昨日は知らない人とか言ってごめんなさい!ありがと!」
「だから気にするなって。偶々助けたが次は知らんからな」
俺はこれで終わりかと思ったが違うらしい。
「それとこれあんたの?」
そこには俺が昨日落した筈の小説があった。
「これ!!探してたんだ!ありがとな!」
金髪最高だ。金髪許さないとか言ってほんとごめんなさい。
心で謝罪をしながら、次も同じ目に遭ったとしても助けよう……ん?待てよ。
そもそも助けようと善意な心が無ければ本を落とさずに昨日の内に見れたのではないか?
……考えたら駄目な気がする。
「あんたって金髪好きなの?」
金髪のツンデレが似合う奴がニヤニヤしながら聞いてきた。
傍から見れば意味不明に唐突に尋ねられた質問かも知れないが、原因は偶々俺が買った小説の表紙が金髪の女性だったからだろう。
「ち.....違うわ!偶々だ!」
慌てて弁明する。
決して金髪が好きなわけではない。
俺はどの髪型も好きな男子だ。
「ほんとかな?」
そう言いながら二人で笑い出すが、昨日助けてもらった恩を忘れているのか?
俺は忘れないぞ?
「クソビッチが」
ぼそっと言うと、二人が一瞬で笑いを止めてこちらを睨んできた。
どうやらこいつらは耳が良いそうだ。
……怖いよ。
「今なんて?」
一人のツンデレがお似合いな金髪お嬢様が笑ってない笑顔で聞いてきた。
「可愛いらしい金髪って言ったんだ」
「……え、可愛いかな?」
「騙されたら駄目よ!こいつ今失礼な事を言った筈よ!」
二人の内一人が驚きの声をあげる。
どうやら誤魔化せたかな?内心冷々してやばい
。知らず知らずの内に冷や汗を掻いているかもしれない。
「ほれ。もう戻れ。お前らと話していると周りからめっちゃ見られるんだよ!」
もうぼろが出ないようにこいつらの背中を押して他所にやる。
どうぞ、他の人達と仲睦まじく話して下さい。
立ち上がって分かるんだが結構色んな人に見られてるんだよな。
前も一度言ったが事なかれ主義だ。
目立つことなど絶対にしたくない。
「ちょっと!あんた私達と話すのが嫌だって言うの!?」
今までそういう経験が無いんだろう。追い払われたツンデレ金髪が慌てた様子で呟くがそんなものは知らん。
「大迷惑だ。周りを見てみろ!めっちゃ目立ってるじゃねえか!本を返してもらったことには感謝しているが助けたのでチャラだ!」
普通なら助けてくれた美少女二人と接点が持てるのに嬉しい気持ちが溢れるのかもしれないが、俺は主人公ではなく平凡な一般男子生徒として平穏に静かに暮らしたいのだ。
金髪二人を追い返して改めて戻ってきた本を読むことにした。
周りからぼそぼそ言われているが知った事ではない。
~放課後~
早く帰って小説の続きを見たい。
主人公がピンチをどんな結末で逆転するのかが気になって仕方がない。
すぐに帰る支度をし、教室を出ると、
「ちょっと」
目の前にはまたしても金髪の二人がいた。
何こいつら、俺のストーカー?
助けてくれたらストーカーする系の美少女なの?
「はあ、またか。今度は何だ?」
「今は放課後なんだからいいじゃない。それより付いてきて」
「なんだ?告白でもするならここでお願いします」
「馬鹿じゃないの?」
そんな軽口を叩きながら来たのは職員室だ。
何でこんな所に?
金髪の二人は入って行くのでここで帰れば逆に面白いかもしれないが、明日も俺に話しかけてきそうなので一応従った方が良いだろう。
「妙先生、ちょっと用事があるんですけど」
二人が呼んだのは俺らのクラスの担任である萩妙先生だ。教鞭は音楽であり、吹奏楽部の顧問でもある女性だ。
聖職者の教師であるが、茶髪に髪を染めているが、黒に染めていない所を見ると、あまり何も言われていないようだ。
ただ、周りからの立ち聞きでは三十代に近づいて結婚を焦っているとも噂がある人だ。
「あら、どうしたの?」
「部活を作りたいのよ」
「タメ口は止めなさいと何百回言えば気が済むのよ」
「それよりも部活」
「無理よ。あれ色々めんどくさいのよ。やるのが私なんだから嫌」
二人は会話を始めているが萩先生は会話終了と言わんばかりにそっぽを向いている。
いや、正直な話興味なんて全く無いんだが、何で部活を作るのに俺がいるのか全く分からない。というより、嫌な予感しかしない。
小説展開ではこんな状況で良い展開が待ち望んでいるのを見たことが無い。
小説って有能だよな!
「先生。お願いよ。いいじゃんそんぐらい」
二人は抗議するが先生は嫌だと断固として拒否の姿勢を崩さない。
萩先生の嫌な理由が面倒だからと堂々と言ってのける正直さには素直に感心は出来るのだが、気持ちは凄い分かる。
面倒なのって本当に嫌だよな!
暇で現実逃避をしていると急に喋るのを中断した金髪の二人は顔を見合わせ頷いた。
……本当に嫌な予感しかしない。
「先生。これ見てください」
すると、何やらスマホ画面を先生に見せる。
スマホを覗き込んだ先生は驚愕して、慌ててツンデレ金髪からスマホを取り、真剣に見つめる。
「これに招待してあげてもいいんですけど。先生が私達のお願い聞いてくださらないなら」
何やら取引が行われているらしい。俺の予想では婚活パーティーの招待状とみた。
頑張れ!
折れるな萩先生!
嫌な予感しかしないんだ。
ここで、貴方が粘ってくれないと俺の平穏が崩れ去る気がするんだ。
「いいわ。メンバーは三人以上が必要だがここの三人でいいの?」
あっさりと懐柔されてしまう萩先生。
もうちょい頑張ろうぜ。
ただ、今はそれ所ではない。
……ここにいる三人?
背後に幽霊でも立っているのかと思い振り返るが誰一人として存在しない所を見ると……俺も含まれてませんかね?いや、含まれてますね。
「いや。俺は入らんぞ。絶対に入らん」
ここははっきり言っておかないと、後々流されて入らないといけないやつだ。
俺ははっきりと言う男だ。
流されるチョロい男にはならない。
「こう言ってるんですよね。どうにか出来ませんか?先生」
ツンデレ金髪がスマホをぶらぶらさせながら先生を脅す。
何でこんな不良娘を助けたのだろうか。
先生が俺の方を向いて何やら考えているのか、顎に手を当てて顔を俯かせている。
絶対に屈しない。何があっても意志の硬い俺を覆せると思うな!!
「そういえば、吉条は三年になったら就職希望だったよな?」
確かにその通りだ。俺は母が離婚してそこまで稼いでいない。なので大学に行くお金はない。よって、必然的に就職と言う形になっている。
というより、ちょいちょい素が出てるんですけどその喋り方だから結婚できないのでは?と話を逸らしてあげたいが、喋った場合俺の明日の未来はない気がする。
「そうですけど」
「部活に入った方がいいんじゃないか?」
「どうしてですか?」
「入学した時にも話したんだが、ああいうのは大抵聞いていないと思うからもう一度伝えるが、就職を希望したものは部活に入ってるとそれだけで有利なんだ。内申書にも書かれるからな。この二人が部活を作るということは面倒な部活ではないだろう。そうなれば、簡単な部活をこなすだけでお前は就職先の幅が更に広がるんだが、どうだ?」
おっと。この人説得が上手すぎるだろ。
「……分かりました。入りますよ」
どうせ幽霊部員になるし俺には関係ない。
話しは終わったと思い、職員室を出ようとすると、
「幽霊部員だと逆に内申下がるからな」
萩先生は最後に口角を上げて悪戯っ子の様な笑みを浮かべて平然と口にした。
それを早く言いやがれクソババア!俺は心の中で悪態をついたが口には出さなかった。
こんな優しい男を皆は尊敬しても良いと思うな!
現在。
「お前ら何で俺を誘ったんだよ」
「面白いからよ」
「全く面白くないぞ」
「今まで私達と話す奴は大概嬉しそうに話すのに、あんたは違ったのよ。そんな人初めて見たわ」
それにもう一人も頷いている。
「俺はお前らの玩具か何かかよ」
「確かにそれも間違ってないかもね」
妖艶な笑みを浮かべて笑われたら不覚にもドキリとさせられる。
そんな風に言われたらどう返したらいいのかが分からないんだが。
「それよりここは何の部活だ?」
「聞いてなかったの?ここは『お悩み相談部』よ!」
「まあ、なんともテンプレの様な部活なことで」
「テンプレ?」
「何でもない」
『お悩み相談部』ってもう単語が最近では聞き覚えがある気がする。もしかして、こいつら隠れオタクなんじゃねえの?とは思わずにはいられない程だ。
「それよりも自己紹介がまだだった。私は
顔立ちは日本人だが、目の瞳が青色であり、生まれつきなのだろう金髪の美人が南澤。どうみてもツンデレお嬢様と思わされる雰囲気を醸し出している。
「私は
もう片方は美人の日本人で、髪は染めただろう金髪が寺垣。こいつは心で不良娘と名付けよう。
「俺は吉条宗広何だが……」
苦難しか待ち受けていない気がする。
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