Dear神さま

宮條水城

神さま、とりあえず、家出します

 私は、今日、唐突に何もかもが嫌になった。

 だから、決心した。


「ラファエル、私、地獄に行きます」


「はあぁぁぁぁぁ!?」

 

「ま、待ちなさい、ミカエル」


 混乱している、と顔に書いたラファエル。

 めったに拝めない貴重な表情かもしれない。


「まさかとは思うけど…あの方に、会いたいから、とか?」


「そうよ、いけない?」


「いけないよ!当然だろう!ダメに決まっているじゃないか!

 あの方は堕天したんだ!

 今は堕天使の長、神さまの仇なんだよ!?」


「わかっているわ。

 だから先の大戦ではちゃんと戦ったでしょう、神さまの片腕として。

 でも、結局私はあの方のいない世界では生きていけないんだもの」


「君は天使長だ。天使をまとめるのが君の仕事だろう?

 仕事を投げ出すのかい?」


「だから、辞表を書いたの」


 にっこり笑ってラファエルに辞表を差し出す。


「いや、ミカエル。人間社会じゃないから。辞表とか書いてもダメだから」


 ちっ。

 ダメか。

 頭の固い天使め。


「あ、今舌打ちした!?ミカエル!どこでそんなこと覚えたの!?」


「もう!ラファエルうるさい!

 私は天使を辞めるの!

 次の天使長はラファエルで良いから。ラファエルが嫌ならウリエルでもガブリエルでも、皆で相談して決めたら良いじゃない。

 とにかく!私はもう天使なんて嫌なの!

 神さまがあの方を天使に戻してくれるなら話は別だけど、そんなこと絶対にない。

 だから、私が会いに行く」


 神さま、ごめんなさい。

 神さまより、ずっとずっと、あの方が大事なのです。

 私は、天使失格です。

 許してなんて言いません。

 ただ、あの方のそばにいさせて欲しいのです。

 神さまや天使の邪魔はしません。

 だから、お願いします。

 私を、見棄ててください。


「ミカエル!」


「さようなら、ラファエル。皆によろしくね」


こうして、神さまに造られてから初めて、私は仕事以外で下界(人間界)に降りたった。


「待っていてい下さい、ルシフェル様。

 今、お傍に参ります」


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