ブロークンハート・パンチドランカーガール
長月 有樹
第1話
駅の入り口を抜けて、凍った路面が反射して綺麗に輝く。
「綺麗」
と思わず。心の中の呟きをつい漏らしてしまう。
あまりにも綺麗で。あまりにも眩しくて。
あまりにも私と真逆で……。それがチクリがザックリに音を変え、私の心を切り裂くみたいな。そんな痛みをもたらしたから私はその氷を踏み砕く。お米3袋に満たない私の重みではうまく砕けず、足を持って行かれそうになる。
ヨロヨロとふらつきながらも何も無かったかのように歩き出す。
「やだなー。もー」
と誰にも誰に言うわけでも無く。
「ホントいきたくないな。」
誰に聞かれたくない本音をつい吐き出してしまう。そうしないとこのどんよりとこびり付いた何かが迫り上がってくる気がして。
芹澤睦美。私の名前。YouTubeを観るのが好き。飼ってる犬のほーまんが好き。ブドウグミが好き。お母さんが買ってくれたヤマハのヘッドフォンが好き。
後は全部嫌い。学校もクラスメイトも先生も男子も。キモオタな野口も。煩い池本さんも。Tik Tokもインスタも。……お父さんと玲奈さんも。みんな嫌い。大嫌い。
だって私をいじめるから。私を壊そうとするから。私を黒く塗り潰そうとするから。オムツとかタンポンとか言うから大嫌い。
私は虐められてる。死にたいと思ってるから。学校に行きたく無いと思ってる。けど家にいたく無いとも思ってる。
私の心は壊れそう。だけど私は生きている。
リュックからイヤホンを取り出す。壊されてもいいダイソーで買ったイヤホンを耳にはめる。
歌が流れる。YouTubeでたまたま聴いた曲。生きてて良かったとかそんな夜を探してるとか歌ってる。
私には無い。けど生きている。だから学校に向かう。今日は何があんだろうと?
駅前には色々な人がいる。私はクラスメイトに会いたくないし家にもいたくないから少し早めに家を出る。けどサラリーマンの叔父さんだったり派手なお姉さんだったり、ボロボロのホームレスのお祖父さんだったり色々な人が仙台駅にいる。
けど私はどこにもいないなと思い歩みを続ける。
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