第1話 帰途に着く行路にて… 上

 ケイティとセラは、キャラと言う、棒についた飴を舐めながら、馬車の後ろに座り、走っているアサトとジェンスを見ている。

 ジェンスの速度に合わせて走っているアサトは、時より手を振る二人を見ては、ジェンスの様子を伺っていた。


 幻獣討伐戦は、討伐隊敗退で幕を下ろしたようである。

 詳しい話は聞いていないが、ドラゴンの襲撃により、軍の2/3の勢力を失った国王軍を、リベルのお供らが、徐々に反撃をした模様であり、アサトらも、敗残兵を救出しながら『グルヘルム』に戻り、当日の夜は、警備の依頼をアサトとタイロンが受け、翌朝にその依頼を受け終わると、休息を取り、午後から、8名で実地訓練を兼ねて、警備の依頼を受けた。


 その後『ゲルヘルム』より、兵士と獣人の亜人の混合支援隊が到着して、『ゲルヘルム』の警護にあたり、アサトら狩猟人への依頼もなくなった事で、『幻獣討伐戦』3日後には、『グルヘルム』を出て、『デルヘルム』への帰路についた。


 途中、セラとジェンスの故郷『カオス』の村に立ち寄り、オーガらの村を見学、再び、ポドメアから太刀などの武器を磨きなおしてもらう事にした。と言うか、使っていないけど…。とりあえず、出せと言われたので出したのだが…。

 ドラゴンとの遭遇に、セラやジェンスの両親は危惧していたが、二人とも旅を続けると断言をしていたようであった。また、オーガの産まれた子供を見させてもらったが、その大きさに驚いた、と言うか、セラは12歳で、身長が140センチあるかないかの小さめであるが、そのセラより若干小さい赤ちゃんであった。

 元気な声で泣く赤ちゃんに一同も目を丸くしていた。

 可愛いと女性陣はあやしていた、時より見せる笑顔と笑い声には幼さを感じるが…。


 …というか…赤ちゃんなんだけど…この大きさは…


 オーガのお母さんも感謝していたが、これは、グンガのチーム、フレディの案だったので、今度ここに来た時にでも言ってくれとクラウトが話していた。

 ゲインツは、相変わらず引きこもり、遊びに行ったケイティに激怒されていたのを遠くで見ていた。

 まぁ~、ケイティが何に激怒しているのかは薄々分かるが…。


 狐の爺さんに、少しだが幻獣とドラゴンの話しをして情報を得ようと思ったが、『リバル家』の話しを聞いただけであった。

 その話が有益な話しなのかは分からなかったが…。


 狐の爺さんの話しでは、『リバル家』は吸血鬼と言う種族で魔族にも分類されるようである。

 スイルランドを拠点とする一族で、この地に『マグナル・リバル』と言う、『リバル家』の次男が、この地に来ているようである。

 『リバル家』の三男には、代々受け継がれている召喚士の血が流れており、『マグナル・リバル』には無いようであった。


 そして、『リバル家』が有していた幻獣が『リベル』との事であった。


 ただ、召喚石で召喚したモノは、時間と召喚士の資質、気力によってこの世界での活動時間が決まっており、長時間の行動は、なにか特殊な力が働いているのではないかと言う。


 また、自称、吸血鬼の王と言っている『グラハル・リバル』は、人間の女性と性行為をして、自分の遺伝子を持つ子供を作ったと言う噂があり、その3兄弟は、“イィ・ドゥ”なのではないかと言う事であった。ただ、これは、噂であると…。そして、奇妙な話を聞いた。

 アルベルトが、この『マグナル・リバル』なるものと遭遇して一戦交えたと言っていた。

 それ以降、この地で、依頼を熟しながら、そのモノを追っているようだと…。


 そう言えば、アサトは、『デルヘルム』で討伐戦が行われた日。

 初めてアルベルトに会った時に、アルベルトが幻蝋の燭台の話しをしている中で、そのモノに心当たりがあるような感じで話している事を、うっすらと思い出していた。

 この事をクラウトに教えると、小さく考えていた。


 それと、最近、人間族が入る事を嫌っている赤い大地に点在するマモノの村で、忽然と生活感だけを残して、住民が消えているとの噂を聞いたと、セラの父親らが話していると言っていた。

 セラの父親らに話を聞いたが、詳しい事はわからないと言い、ただ、昨日来た者が話していた事だと言う事であった。

 この話しにもクラウトの表情が曇っていたのを、アサトは見逃さなかった。


 なんだかんだで2日、ここ『カオス』で過ごした後、再び『デルヘルム』へと向かった。


 途中、レヂューの群れに遭遇して、再び確保を試みたが、やっぱり疲れだけが残った。

 スカンルの群れに遭遇したが、なぜか、こちらを見てちょっかいは出してこない、なぜと思っていると、どうやらセラの存在のようであった。

 セラが近付くと後退をする。

 セラが近付くと後退をして…。

 その行動に確信を持ったケイティがセラを抱くと、2日追い回されたのが頭に来ていたのか、スカンルを追い回していた。

 ケイティ曰く、2日追い回されたから20日追い回してやるとの事だったが…とりあえず、10分ともたずにセラと一緒に戻って来て…、馬車は進み始めた。


 アウラに寄るが、ケイティは、ここは嫌いと駄々をこねる…。

 そのケイティをアリッサとシスティナがなだめ、少しばかりだが時間を取る事にした。

 セラが湖イタチを見たいと言っていたので、女子4名とタイロンが湖イタチを探しに出た。

 ケイティは乗り気ではなかったようであり、イヤな予感がする…と言っていた。


 …ほんと…イヤな予感が…。


 アサトとジェンスは修行に励む。

 クラウトは、ここまでの旅の記録を書きとめているようであった。


 夕方、イヤな予感は的中した。

 ドロドロネバネバのうちの姫が激怒して帰って来た。


 ほかは…、まぁ~話を聞く事もないと思うが…。


 コテージに戻って来たセラは、なぜかケイティをさげすんだ目で見ていた…と言う事は…。とりあえず、そこには触れないようにしようと思う…。


 村人から面白い事を聞いた。

 数日前に、奇妙な集団がここの外に宿泊したようである。

 ボロボロの馬車に、3名の男が縄で繋がれ、おっとりとした女性がその3名に何か説教か虐待かをしていたようであった。

 話を聞くと、ここより北にある『レッテウ山』に護送中との事、なにか罪でもしたのか?と聞くと、『存在自体が罪』と言っていた。

 助けを求めていたが、『構わないで、身内だし、野に放つと厄介ごとが多くなるから』と優しい瞳で笑っていたと言っていた。


 …もしかして…。


 クラウトはおでこに手を当てていた…。


 そして、ここを出る時に、歌を歌って出て行ったと言っていた。

 その歌は…


 ♪山を登って行こうよ…殺されに~~っていう感じ。


 その歌に、重罪人と思われる者らも追随して歌っていたと言っていた。

 知り合いか?と聞かれたが、知らない!と強い口調で、クラウトが答えていたのが妙に可笑しかった…。

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