第9話 まともに探索できません

『跳躍』……飛ぶこと。ジャンプすること。それ以上でも以下でもない。無限1UPには必須スキル。このスキルがあったお陰で高い所に飛びつけたり、逆に高い所から無傷で飛び降りれたりして助かった卓も多いらしい。不良がよく小銭欲しさにさせる場合もある。困った時はジャンプしてみるのもいい。気分が晴れるかも。




 試練の洞窟、それは過去の勇者たちが初めに訪れるといわれる洞窟。勇者たちはここで世界の成り立ちや魔王がどういう存在か知ったという。


「中は結構、暗いね」


 無事試練の洞窟にたどり着きクレアと合流できた俺は、洞窟の中に入ることにした。


「魔法で照らしますね」

「その魔法、俺は恩恵に授かれますかね?」

「こ、今度は大丈夫ですよ!」


 移動魔法の一件で置いてけぼりを食らった俺は恨みがましく言ってみた。クレアよりも男らしくもない。

 クレアが魔法を唱えると中が薄明るくなる。遠くを見通すのはさすがに無理だが、身の回りを確認することはできる。洞窟は石材でできており、まだ昼間だというのに薄ら寒さを感じる。


「何か出てきそうだな……」


 俺がボソッと呟くと隣に居たクレアがブルッと身震いさせる。おいおい、頼むよ。これ冒険なんだから。


 しばらく中を歩くが一本道で魔物の気配もない。時々コウモリが居るくらいで、随分と安全な洞窟のようだ。まあ最初の洞窟で魔物が大量にいたら勇者になる者がいなくなってしまうよな。


 さらにしばらく歩くと開けた場所に出た。部屋の中央に石碑がある。さらにその奥、部屋の反対側には扉が見えるが閉まっており、扉までの間には道が無かった。10mはある。


「行き止まり、じゃないよな」

「石碑に何か書いてありますよ」


 クレアに言われて石碑を読む。『太陽と月と星、三つが輝ける時道開かれる』とあった。


「太陽、月、星ねえ」

「謎解きでしょうか?」


 部屋をよく観察すると部屋の一方にレバーが三つあり、残り三方にそれぞれ太陽、月、星を象かたどったオブジェが置いてある。はは~ん、これに明かりを灯す謎って訳だ。


「どうすればいいのでしょうか?」

「とりあえずレバーを倒して規則性を見つけるか」


 そう言って俺はレバーの一つを掴んで押し倒した。レバーは音を立てて根元から折れた。


「…………」

「…………」


 流れる沈黙の時。


「これで謎は永遠に謎のままだな……」

「どうすればいいのでしょうか?」


 そもそも設計者は勇者の力を見誤っている、と言いたい。あと女神は殺す。絶対に、だ。


「よし、跳ぼう!」

「跳ぶんですか!?」


 奥の扉の前には少しスペースがある。クレアを担いで跳ぼう。その方がいい。というか、それしか手が無い。俺は荷物を担いだクレアを担ぐと奥のスペースに向けてジャンプした。頭は天井スレスレまで届きギリギリの位置で着地できた。


「でも扉が開きませんよ?」

「そんなもんは、ほら!」


 俺は扉を軽く小突く。扉は豪快な音を立てて粉々になった。次の勇者は謎解きをしなくても済むのではないか?ここまでジャンプできれば。


「さあ、行こうか」


 俺とクレアは奥へ進んでいった。






―――――――――――――――――

女神への質問コーナー

Q ダンジョンで正規の攻略をしていない気がしますが大丈夫でしょうか?


A 進んだ道が正規ルートです。自信を持って行きましょう。ダンジョンといえば謎解きがつきものです。きちんと悩まずに攻略できているか、女神はとっても心配です。

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