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あたしには言えないって、どういうこと?
そういえば……
以前、ハカセが話していた。
――『ジュナの掛けた封印が解け、地縛霊が甦ったのかもしれない』
唐沢先輩の掛けた封印……。
あの時、あたしには何の話か、さっぱりわからなかった。
――『ジュナの前に十人目の女子が現れ、ジュナが呪いを解くことを恐れた地縛霊が、それを阻止しようと蠢いているとしたら、神川の突然死も納得がいく』
唐沢先輩と地縛霊……。
「唐沢先輩、この絵画には、何か意味があるのね?」
絵画の美少女達が一斉に微笑む。
『私達はジュナ様の願いを叶えるために自ら命を差し出した者たち』
『晶子、それ以上彼女に話さなくていい』
『ごめんなさい、ジュナ様。少しお喋りが過ぎました』
唐沢先輩に制止され、美少女が口をつぐむ。
この絵画に隠された秘密があるの?
噂では美術室の幽霊が、絵画に美少女の魂を封じ込めたとしか聞いてないよ。
自ら命を差し出したって、どういう意味?
だから彼女達は、死んでいるのにこんなに幸せそうなの?
唐沢先輩に恨み辛みを言うどころか、みんな満たされた表情をしている。
『それよりも、もう俺の絵画は完成したのか?』
完成するはずはない。
様々なことが起こり、落ち着いて絵画を描く気分にはなれない。
『コンクールまで時間がないのだろう。俺にも時間がない。描くならさっさとしろ』
俺にも時間がない?
どういう意味?
「……すみません」
美術室の片隅からキャンバスを取り出す。唐沢先輩は窓際に腰掛けた。
絵筆を握った時、美術室のドアが開いた。
顧問の柿園先生と伊住君だ。
「……伊住君」
「風見さん、部活中ごめん。早速なんだけど柿園先生に絵画のことで相談したんだ」
「……絵画」
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