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――その日の放課後、化学室と化学準備室のドアに貼ってあった【入室禁止】の貼り紙は、もう剥がされていた。
ドアを開けると、室内はカーテンが閉められ薄暗い。プーンと鼻をつくような薬剤の臭いがした。
化学準備室のカウンターの上には、ビーカーやフラスコが並ぶ。
ハカセがここで実験していたんだよね。
涙が滲んだ。
不意に……
背後に人の気配を感じた。
ゴツゴツとした手で、口を押さえられ、片手で体を拘束された。
恐怖から足はすくみ、声も出せない。
全身からスーッと血の気が引く。
本橋さん……!?
それとも、本橋さんを操っているヴァンパイア!?
殺される……!!
首筋に顔が近付く。
怖くて足がすくみ、ギュッと瞼を閉じる。
あたし……
吸血されるんだ……。
ヴァンパイアとして甦り、この世で生きたくない。
「……た……すけて」
不意に化学準備室のドアが開き、あたしは拘束から解き放たれた。
「風見さん、何しているの? まだ薬剤を散布したばかり。入室禁止の貼り紙見えなかったの」
「柿園先生……」
急に体の力が抜け、あたしは恐怖から……気を失った。
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