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 澄斗はというと、あたしの後ろに隠れている。目を開けられないほどの突風なのに、本橋さんは瞼を閉じることなくじっとハカセを見ている。


『ハカセ、もうやめておけ』


『ジュナ、この小生意気な男子が俺にカメラ向けるからさ。化学室を撮影するなんて百年早いよ』


『百年経ったら死んでるだろ。人間は俺達とは違うんだ。永遠に学生じゃない』


『俺ならコイツに永遠の命を与えてやることが出来るけど。だが男はいらねーな』


 唐沢先輩が腕組みをし、ハカセを睨み付けた。


『やっぱり犯人はお前か』


『バカ、たとえばだよ。お前は相変わらずジョークが通じねーな。俺は禁血中だって言ってるだろ』


 黒谷君は周囲を見渡し、立ち去る。


 澄斗はまだ尻餅をついたままだ。


「澄斗、いつまで腰抜かしてんの。だらしないな」


「うっせぇ。急に突風が吹いたから驚いただけだ。廊下の窓開けたの誰だよ」


 澄斗はズボンをパンパンと叩き、立ち上がる。


「俺は校庭で描く。じゃあな」


「美術室が怖いの?」


「そうじゃねぇよ。流音も早く切り上げて帰れ」


「わかってるよ。キリがついたらね」


 キャンバスと学生鞄を持ち美術室を出る澄斗を、本橋さんが追い掛ける。


「待って、空野君。風見さんお先に」


「……さよなら」


 澄斗と仲良く歩く本橋さん。澄斗の背後からそっと腕に手を回す。


 うわっ、まるで彼女みたい。

 付き合ってるのかな。


 転校してきたばかりだよ。

 澄斗が女子に手が早いとは。


 サイテーだよ。

 澄斗のバーカ。

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