まるで物語のような恋だった

久里

プロローグ

 ○月×日。


 嘘でしょ……?

 頭が、理解が、全く追いつかない。


 あと、たったの一ヶ月で、わたしは死ぬらしい。

 昨夜、死神に、そう宣告されたのだ。


 わたしは、まだ、十五年間しか生きていないのに。


 信じたくない。


 でも、死神はぞっとするほどの美しさで、「一ヶ月後にまた迎えに来るよ」って笑っていた。わたしの意志なんて、踏みにじってしまうように。信じられないような話なのに、本能的に理解させられた。


 いやだ。

 みんなと、お別れしたくない。まだ、やりたいこともある。夢だって、ある。


 それに、わたしはまだ、桐生くんとまともにお話すらできていないのに。


 クラスメイトの、桐生きりゅうくん。

 話した回数は、指を折り曲げて数えられるほどしかないけれど。

 わたしは、たぶん、彼が好き。

 物静かで、楽しそうに本を読む彼に、ひかれている。


 彼のことを、もっと、知ってみたかった。

 桐生くんなら、わたしの夢も、笑わずに聞いてくれるような気がしていた。


 でも、意気地なしのわたしは、たぶん、このまま最期の時まで彼に話しかけてみる勇気すら持てないんだろうな。


 こんな風に想っていることなんて、彼どころか誰にも知られることなく、わたしはこの世界と、桐生くんと、さようならをするのだろう。

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