第23話 それでも妹は廻っている
「んで、なんかやりたいこととか見つかったか?」
留萌先生が教卓に
俺ら(仮)部の四人は一通りの部活を見て回ったあとに自分たちの部室へと戻った。
しかし、結局俺は俺が何をしたいのか見いだせなかった。
「いえ、特に見つかりませんでした」
灰咲が優等生みたいな口調で素直に答える。
「そりゃここまで部活に入ってないお前らのことだしな。永淵はどうだ?」
「部活動見学自体はそこそこ楽しかったけど、見て回った部活がいいかって言われるとそうでもないような......」
「ふむふむなるほどな。七宮妹はどうだ?」
「そうですね。皆さん楽しそうに活動していて、こっちも楽しくなるくらいでした。でも...」
七罪は一瞬だけ言い淀んでから話を続けた。
「上手くは言えないんですけど私がほかのところに入るのはなんか、違うかなって思って」
「ほうほう。トリに七宮兄、バシッと決めてくれ」
「なんでプレッシャーかけるようなこと言うんですか……」
「まぁいいだろ、ほらお前の感想聞かせろ」
「……そうですね。俺もみんなと同じで特に入りたい部活とかやりたいこととかは見つけられなかったんですけど」
俺は他の部員の顔を見まわして答えを導き出す。
「このメンバーだったら何やっても楽しいかなって俺は思いました」
俺はこの部活動見学で何をやるのが大事じゃなくて誰とやるかが大事なことに気付くことが出来た。
「……それに、部活なんて面倒臭いしつまらないだろうなって思ってたけどこの四人だったら気を使う必要も無いですし、ぶっちゃけもう既に楽しいです」
「そうだ、それだ。私がお前らに求めていたものはそれだぞ七宮」
留萌先生は胡座をかいたまま話を続ける。
「この部活動見学で大事だったのは実はやりたいことを見つけることじゃない。誰とやりたいことをやると楽しいかと想像を膨らますことだ」
初めからそれを想定して部活動見学しろなんて言ってきたのか、この人は。
「お前ら(仮)部の部活動内容は『好きなことを好きなメンバーでやる』。これでいいんじゃないか?つまり内容とかは特に決める必要はないって訳だな」
「なるほど……。ていうかそれって部活動的にアリなんですか?」
「アリだ。お前らも罪と罰部とか色々やばい部活を見てきただろ?」
「た、確かに」
「この学校じゃ部員が三人以上いるなら自由に部活を作ることができる。部室は顧問がいなきゃ与えられないけどな」
「そんなルールだったんですね...」
七罪は知らなかったようだ。
「まぁ、なんだかんだお前ら。いいメンバーだと思うぞ」
留萌先生は教師のようなセリフを言って教卓から降りた。いや教師なのは確かなんだけど。
「じゃ、本日はこれにて終了。また明日な、気をつけて帰れよ」
留萌先生はぴしゃりと扉を開けて出ていった。有無を言わせぬその帰り方にはもはや尊敬の意すら感じる。
「じゃあ俺らも帰るか」
俺の呼びかけに皆が頷いた所で本日の(仮)部の活動は終わった。
◇◇◇
俺たちは学校の正門までは皆同じ道なので四人一緒に歩くことにした。隣に灰咲、前に七罪とノアが並んで歩いている。
「というか灰咲、昨日部屋に鍵かけてたのにどうやって入ったんだ?」
俺はちょっとした疑問を灰咲に投げかける。
「あれは外側から回って窓から侵入したのよ」
「さらっとすげぇこと言ってんなお前!」
「七罪ちゃんのためならなんだってするわ」
「えっ?灰咲先輩呼びました?」
ノアと肩を並べて歩いていた七罪が後ろを振り向く。
「ええ。七罪がかわいいって話を二人でしてたの」
「お二人共どんな会話してるんですか...」
「七罪はかわいいからな」
「同感ね。もちろんノアちゃんも可愛いわよ」
そう言って灰咲はノアの頭を撫でた。
ノア、気をつけろ。そいつは性的な目でお前を見ているぞ。
「………ふっ、こうして撫でられるのもまた一興といったところか」
まぁ、ノアが可愛いのは分かるけども。
俺がノアに向ける視線と灰咲が向ける視線はまるっきり違うものだ。そう、違うはずだ。
俺は小声で灰咲に話しかける。
「お前、バッグの中に七罪のパンツ入れてたりしないだろうな……」
「そんな変態じみたこと私がするわけないでしょ」
「どの口が言ってんだよ!」
「うわ下の口って言わせようとしてる。セクハラやめて。死ねば?」
「微塵もそんな気無かったわ!お前どんな脳みそしてんだよ!」
「七宮君って妹だけじゃなくて脳みそにも欲情するの……?気持ち悪いわね……」
「お前の発想が気持ち悪いわ!」
あーもう会話がめちゃくちゃだよ。
灰咲にはどう足掻いても勝てない。こいつの発想力は常軌を逸している。
「じゃあ私達はここで」
「ベルフェゴール、七罪。また会おう」
二人に手を振ってから俺達は別れた。
やっと七罪と二人きりになれた。いやあいつらといるのが嫌なわけじゃないけど七罪は特別っていうかなんていうか。
「夕焼け綺麗ですね」
「ああ、そうだな」
お前の方が綺麗だよ、という言葉が喉奥まででかかったが
そういう所だよな、俺の悪いところ。
妹と一緒に夕暮れの下、二人肩を並べて家に帰る。
そんな機会がこの俺にも訪れるなんて夢にも思っていなかった。
なんか……今俺、凄い幸せだ。
「お兄さん、部活入って良かったんじゃないですか?」
「そうだな。でも俺、七罪と一緒だったらなんだって楽しいと思うよ」
「………私もお兄さんと一緒だったらなんでも楽しいと思います」
「………………ヴッ………」
俺は高鳴る胸の動悸をなんとか抑える。
くそ、七罪が可愛すぎる。
かわいさのパラメーターカンストしてんだろこいつ。
「お前マジで俺を殺す気かよ...」
「へ?いやいやお兄さんが死んだら私生きていける気がしませんし………ってお兄さん!?お兄さーーーんっ!!」
俺は七罪のかわいさのあまり気を失って、そのまま命を落とした。七罪は死の間際まで俺のそばにいて名前を呼び続けたという。その時の俺の表情は非常に穏やかで悔いのないような顔をしていたと後世にも伝えられた。
この生涯に一片の悔いなし────
……いや死んだのは流石に冗談だからな。
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