第2話 再会

 ──あれから8年。


「(ふうちゃん、迎えにきたよ)」


 " 春くん" はまた父親の転機により元いた所へ戻ってきたのだった。


 それは、春も終わりこれから夏が始まる季節のことだ。


「今日は転校生を紹介する。入っていいぞ」


「はい」


 返事とともにドアが開けられた。


「じゃあ、自己紹介をお願いします」


桜井春哉さくらいはるやです。よろしくお願いします」


 春哉は深々とお辞儀をした。


「桜井……じゃあ、席は一番後ろの窓際から二番目。野海の隣な」


「はい」


「(のうみ……まさかね)」


 春哉は隣の席の名前を気にしながらも席に着いた。


「俺、香月秋翔こうづきあきと」っていうんだ。よろしくな」


 前の席に座っていた秋翔が振り向いた。


「よろしく!」


「前はどこに住んでたんだ?」


「元々はこっちにいて東京に引越しして、戻ってきたんだ」


「前いたのかー! じゃあどこかで会ってたかもしれないんだな」


 春哉と秋翔とが仲良くなるまではそう時間がかからなかった。


 授業も終わり後はHRをして帰るだけだ。


「(やっと、帰れるー!)」


 HRが終わったことに喜んだ春哉。


「……──じゃあHR終わり! 気をつけて帰るんだぞ!」


「あ、野海! 隣の桜井に学校案内してやってくれ!」


「……え! 私がですか?」


「おう! 頼んだぞ!」


「……はい」


 担任はそう言い、教室を後にした。


 だが、すぐに帰ることはできなかった。






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