カタストロフ・クリーク

海風奏

第1章 聖戦の幕開け

プロローグ 失う

 喝采かっさいを。我らが黒き王に喝采を。

 頭の中を反響はんきょうする叫び。

 この記憶はなんだ?

 目を開ける。満点の星空が眼前がんぜんに広がる。聴覚の感覚が戻ってくる。

 聞こえるのは叫び。だけどさっきのそれとは違う、言うなれば悲鳴。

 起き上がり目に飛び込んできた光景は、惨殺ざんさつ血飛沫ちしぶき

 響く怒号どこう。僕は状況が飲み込めずにいた。でもひとつわかる。すぐに立ち上がり、走り出す。僕のことを畏怖いふせず、したってくれる人の元に。

 見つけた時には既に遅かった。彼女の体は真っ二つに斬られていた。彼女を殺した奴だろうか、僕を見て、刃を構える。

 僕が彼に抱く感情は憎悪ぞうお。全てを飲み込む負の感情。

 刹那、意識が途絶えた。

 ーー

 ーーー

 ーーーー

 風が吹いた。再び目を開けると、夜が明けようとしていた。しかし、そんなことすぐに頭の片隅にも置かれることなく消え去った。

 血の海に僕だけがいた。

 村の人々だけでなく、村を襲った兵士まで、全員が死体と化した。何が起きたか、察しはつく。僕が、殺したんだろう。

 光なき目には捉えるものもない。

 僕は目的も分からぬまま、歩き出した。

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