第27話 結末

「生きて……生きて帰ってきたの!?」


 開口一番、褒めるともけなすとも付かぬ言葉を吐いたあたしに、彼は特に気にする様子もなく答えてくれた。


「あぁ、ちゃんと魔王退治してな、帰ってきたさ。まだここの号外じゃ、俺が闘ってるところまでしか話は進んでないようだが。見ての通り、たくましくなっただろう? 村から一生食うに困らないだけの財産も貰えるみたいなんだ」

「そう。あなたがいない間にあたし、母さんを亡くして、生活保護を受けてるのよ、笑っちゃうでしょ」


 笑われても怒られても仕方ないと思っていた。だが、彼の言葉は違った。


「生活保護だって? じゃあ、そんなのいますぐ返上しちまえよ。俺が養ってやるよ。」

「へっ……?」

「それとも、俺のことは、なのかな?」


 あたしも彼も、色づいた桜よりももっともっと、顔を真っ赤に染めていた。




 こうしてあたしの楽しくも苦しい生活保護受給者という立場は終わった。これからは、勇者さまの伴侶として、それなりに幸せな生活を続けていくことになるのだろう――

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健康的でファンタジックな最低限度の生活 天照てんてる @aficion

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