第24話 生活状況変動届

 あたしは以前から日雇いで働かせてもらっている現場に行って、無事に保護が決定されたことを伝えた。親方は、「また安く雇っちまうことになるけどよ、仕事は回すから安心しな」と笑って受け入れてくれた。


 その日は体調がよかったので、早速せっせと魔力草を集める仕事をすることにした。今までは金貨2枚もらえていた仕事だ。だが、保護費に上乗せできるのは金貨1枚まで。


「本来は金貨2~3枚出したいぐらいの量なんだけどよ、そんなにもらって保護打ち切りになっても困るだろ? だから、月に2回働いてもらって金貨1枚でどうだい?」

「あたしが危険な目に遭うこともほぼ有り得ないお仕事ですし、大歓迎です! 定期就労で報告してきますね! 契約書作ってもらえますか?」


 二度目の生活保護である。慣れたモノだ。定期就労が始まると、どういった条件でどこで働くことになったという面倒な紙切れを出さなければならないことは、もう知っていた。前回は寮生活だったのでそういう書類は必要なかったのだが、家族が増えたときや仕事を始めたとき、やめたとき、などなど、届け出が必要な場面は多く存在する。




 翌日、役所に契約書を持って行って手続することにした。窓口で出された紙切れは、【生活状況変動届(就職用)】というなんともシュールな名前の紙切れ。雇用主の名前や仕事内容など、うんざりするような細かい項目を含めても、1時間たらずで書き上げることができた。


 かかりつけのシャーマンが言うには、先天性の障害だからあまり無理して働かない方がいい、とのことだった。だが、私は保護費でぬくぬくと暮らすほどダメな人間ではない、そう自分のことを思っていた。思いたかった。


 だから、寮生活を終えたあと、無料ではなくなった医療費を払いながらも、家を借りるだけの費用を貯め込む程度の無理はしたのだ。そのまま自力で生活するのは困難だとしか言いようがなかったが。

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