第221話 おまけのミカエラ編

「にやーっ!」



「ちがう、違うっ! 正座せいざになって無いでしょお。それじゃあ、おすわりじゃない」



 って事を急に言われましてもですよ。


 私、正座せいざなんて、ほとんどした事無いですもの。


 生まれて初めての正座は、昨日の真夜中……ううん、正確には今日の早朝、未明の頃に受けたお仕置きが最初はじめてなんだものぉ。


 あぁ、こんなに早く、この白い悪魔リーティア様が帰って来るとは思わなかったわぁ。


 って言うか、お出掛けしたのは今日の朝でしたよね。


 確か『一泊して来るー!』とか、言って無かったっけ?


 本当にびっくりしたわよ。


 何しろ、アル姉ご主人様のお部屋で寛いでいた私の背後に突然の殺気っ!


 あっ、私られるっ! って思ったわよっ。マジ思ったわよ。


 それで振り向いてみたら、白い悪魔この女仁王立におうだちしてる訳じゃない!


 もう、本当の『恐怖』を感じた時って、声も出ないって言うけど、あれ、本当の事よね。


 そのかわり、違うものがちょっぴり出たわよ。


 えぇ。ちょっぴりよ。ほんのちょっぴり。


 それに、ちゃんとその後、洗濯場に持って行ったから大丈夫。


 ご主人様が居なかったから、ちゃんと優しい女神様にも報告したわよ。


 そしたら、後で女神様がお洗濯しておいてくれるって言ってたわ。


 ……良かった。


 でも、良く考えたら、私のパンツを女神様に洗わせて良いのかしら?


 この神界って、良く分からない所よね。



「だぁかぁらぁ。指はみっそろえなきゃ駄目でしょ!」



 っていいながら、私の方を見ないで、さっきから何やってるの?


 せっかく私、水戸〇門の見てたのにぃ。


 まだ神言は分からないけど、最後に全員がおじいちゃんにひれ伏す所が良いわよねぇ。


 多分、あのおじいちゃんが、全能神様なんでしょうねぇ。


 やるわねぇ。全能神様。


 って言うか、どうしてこの薄い板に全能神様が映っているのかしら?


 窓?


 って訳でも無いのよねぇ。第一窓なら開くはずだしね。


 しかも、声は聞こえて来るのよ?


 何か、魔法の道具なんでしょうけどね。


 まぁ、神界ですからねぇ。


 多少の事では驚かないわよ。


 それにしても、正座は疲れるわぁ。



「ふぅ……」



 白い悪魔このおんな、めちゃめちゃ私に厳しいのよね。


 完全に奴隷。間違いなく屋敷僕やしきしもべ扱いよ。


 それよりも、まだテレビを見ながら何かやってる。


 結構焦ってたから、何か大変な事が起きている……って事はまちがいなさそうね。


 触らぬ神に祟りなし……。


 そうだっ! そーっと、このまま逃げちゃおうかな。


 って、駄目ダメ。絶対にダメ。


 もしつかまったら、後で地獄を見る事になるのよ。


 ここはぐっと我慢、がまんっ!



 ――ピンポーン



 あっ! 誰か来た。


 この音は、誰かが来た時に鳴る音なのよねぇ。


 きっと、入り口に奴隷さんがいて、誰かが来るとかねを鳴らしているのね。


 さすが神界。


 こんな些細ささいな所にも、お金を掛けているって訳よねぇ。



「あっ! お越しになられた様ねっ!」



 ――ドキッ!



 もうっ! 突然振り向くのは止めてよっ! めちゃめちゃ心臓に悪いんだからっ!



「さぁ、出番よっ! あなたもいらっしゃい」



 私は、白い悪魔あのおんなに連れられて玄関へ。


 するとそこには、若い女の子が二人。


 そして、優しい女神様が応対している様ね。


 何やら神言で話してるけど、ぜんぜんわかんない。


 まぁ、私もここに来て一週間。まだ、言葉は勉強中なの。



『ほらっ、あなたの出番よっ!』



 白い悪魔あのおんなの陰に隠れていた私は、突然彼女達の前へ。



『はあっ! あああ、あのぉ、えぇぇっと』



 突然の事に、ドギマギする私。


 でも、彼女達二人は、最初はちょっと驚いた様子だったけど、その内、優しそうな笑顔で私を見てくれたの。


 うん。やれる。やれるわっ。私、やれるっ!


 練習の成果を見せる時が来たのよっ!


 そう決心した私は、ゆっくりとその場に正座して、彼女達に三つ指をたててお辞儀じぎをしたの。



「よよよ、ようこーそぉ、



「「「……おぉぉぉ!」」」



 周りから、どよめきが聞こえて来たわっ。


 どうやら、上手く行っている様ね。


 さぁ、次よっ!



「みみみ、みさちゃんは、さっさとぉ、、くーださーい」



「「「……」」」



 はて? 何の反応も無いわね?


 何か私、間違ってる? さっき、白い悪魔あのおんなに聞いた通り、一字一句いちじいっく間違えていないはずよっ!


 私は、そーっと顔を上げてみたの。そしたら、



「「「きゃーっ、ははははは!」」」


「『お帰りなさい』が『お帰り下さい』になっちゃってるー! おっかしー!」


「日本語覚えたてなんでしょー! 仕方ないよぉー!」


「かわいいー! なにこれー! 外人さんの猫ちゃんコスプレ―! 最高サイッコー!」



 ……うーん。


 なにやら、ちょっと違う様な気もするけど、神語はわかんないし、まぁ、っかっ。


 皆が笑顔になってるから、上手く行ったって事よね。


 私は、そっと白い悪魔あのおんなの様子を見たの。


 そしたら、ちょっと苦笑いしている様子。


 まぁ、怒ってはいない様だし、とりあえず及第点って事ね。



「ふぅぅ……助かったぁ」



 ヤバかったわぁ。


 このミッションをクリアしないと、今度は両手をイガイガの実の臭いにするって脅されてたんですものぉ。


 安堵していたのも束の間。


 私は今来た女の子達に両脇を掴まれ、そのまま居間の方へと連れて行かれてしまったの。


 ……はぁぁぁ。水〇黄門、見たかったなぁ。

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