第二十一章 復讐の時(ルーカス/ミランダルート)
第207話 望郷の朝市
「すぅぅぅ……はぁぁぁ……」
少女は
その
「えへへへ」
そんな自身の
「まずは水、それから何か食べるものを……」
彼女はそう
まだ日の出までには
しかし、彼女にしてみれば、これだけの
どうやらここは、
彼女の視界に入るのは、
残念ながら、ここでは水も食料も手に入れるのは難しいだろう。
「でも……あの青い光は何かしら……?」
自身の知らない
しかし、今はそんな事をしている余裕は無い。もっと視界の開けた場所に行かなければ。
早速、
「はぁ、はぁ、……っはぁ」
予想外に急な壁面。流石の彼女も息が上がる。
しかし、なぜだろう。
彼女の手足は更に速度を上げ、その顔からは
ようやく
多少
「ふわぁぁぁ……」
思わず
それもそのはず。
彼女の登って来た崖の反対側には、弓なりの形をした長大な砂浜が広がり、さらにその奥、内陸側に向かっては幾千、幾万にも及ぶ
南方大陸の
「……あの街に行けば、きっと
そう自分自身に言い聞かせる事で、これからの
決して興味本位では無い。
そう、自分に必要なのは、水であり、食料なのだ。
そう、思い定めた彼女は、早速
途中で何度も
ご自慢のエメラルドグリーンの髪をすり抜ける、少し湿った
「うふふふっ、あはははははっ!」
どうにも笑いが止まらない。
今、この瞬間。
彼女の中では、姉の
やがて、彼女が街の入り口に到着した頃には、空はすっかり白み始め、モノトーンであった街の
赤い
それらが
そのどれ一つとっても、ふるさとの南方大陸とは全然違う。始めて見る風景。
「……ん? なんだろう?」
まだ日が
その音に
すると……。
「はぁぁぁ……」
その
どうやら、この
彼女自身、
しかし、ここまで規模の大きな
まるで吸い込まれるかの様に、屋台の群れの中へとその身を投じて行く彼女。
見るもの、聞くもの。その全てが
「うふっ、うふふふっ」
思わず笑みがこぼれてしまう。
と、その時、彼女の足元に少し大ぶりの果物が一つ転がって来た。
そっと、
「あぁぁ。パイルの実だぁ。ヴァンナさんのおっぱいより、ちょっと小さいかなぁ? うふふっ」
久しぶりに感じる故郷の香り。
パイルの実は、南方大陸では比較的ポピュラーで、所によっては年中市場に並ぶ果物なのである。
そんな
どうやら、その山と積まれた中の一つが、偶然こぼれ落ちたのであろう。
彼女は
「おい、
――ビシッ! ゴロゴロッ!
「痛っ!」
突然、両腕を
余りの
剣の代わりにでもしているのだろうか。
「わっ、私は
どうにも腹の虫が収まらない彼女。改めて少年に詰め寄ろうとしたその途端。
――ビシッ!
「キャンッ!」
「
何か伝えたい
尚も彼女を打ち
「クッ!」
もう、我慢できない。
突然、彼女の目が妖しく輝いたかと思うと、その二の腕には、薄っすらとした渦とも炎とも取れる様な、黒い
ただ、彼女の目の端に映る人の群れ。
いつの間にやら、二人の周りには大勢の人だかりが出来上がっていたのである。
流石にこんな所で騒ぎを起こすのは得策では無い。
「チッ!」
舌打ち一発。
彼女は踵を返して雑踏の中へと逃げ込もうとした。
しかし……。
――ボクッ!
「ギャンッ!」
彼女の
彼女は完全に呼吸を止められ、その場に倒れ込んでしまう。
「ストラトス。この
「はい。
ストラトスと呼ばれた少年は、急ぎ
「うぅぅぅ……」
未だ、うめき声を上げながら、
そんな彼女の視線の先には、黒地に金の装飾を施した鎧に身を包み、己が身長の二倍以上はあろうかと言う大槍を抱えた兵士が、
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