第206話 アレクシア神殿での密約
――カツーン……カツーン……カツーン
大理石で造られた壮大な神殿に
既に日は傾き、
神殿の中では、次第にその勢力を伸ばそうとする
やがて……。
神殿の最奥にある重厚な扉が押し開かれると、そこからは、幾多の神官達にかしずかれた、一人の
彼は
――ダン、ダン、ジャキッ!
彼が神殿の正面に
恐らくそれが、彼らの忠誠の証なのだろう。
青年はその様子を横目で見ながらゆっくりと玉座に腰かける。そして、満足そうに一度だけ頷くと、右手を軽く水平に動かしたのだ。
――ジャキン!
すると、衛士達は再び待機の姿勢に。
やがてその青年は、椅子のひじ掛けに左手を乗せ、
「ようやく考え直してくれたのか?」
整列する衛士達の中央。
玉座の遥か手前で臣下の礼を取る一人の老人。
しかし、彼はその問いに答える事無く、体を左右に
「ふふっ。
そう優しく語りかける青年。
しかし、その目には、ひと
一瞬の沈黙の後、ようやく話し始める老人。
「……
ただ、青年に促されたにも関わらず、
「ふん、分かっておるわ。例のエルフ娘の事であろう? 私の手に掛かれば
「いやいや、その件もさることながら、
その、あまりにも
しかし、その意図を理解した青年は、何やら
「おぉ、そうであったな。心配するな。
どうやら
「ははっ、ありがたき幸せ」
老人は、更に深く
「剣聖ヴァシリオス殿が皇子様の
玉座の横に居並ぶ神官の一人が、
「アゲロスよ。
「ははっ。
その
「それでは、ヴァシリオス。
「御意。……それでは、マロネイア卿。以後、良しなにお引き回し下され」
まずは玉座に座る
次にその横に
「ホッホッホ。何を申される、剣聖殿。同じ神を
「格別のご配慮、痛み入り申す」
「いやいや何の。今後、私の事は
その優しげな微笑みには、聖職者としての
恐らくそれこそが
この
何の
「いやいや、いくら剣聖と威張ってみても、
「うむうむ、承知したぞ、承知した。それではヴァシリオス。共に、皇子様の為に働きましょうぞ」
「はっ、
まさに
たまたま、お互いの目的と方向性が合致しただけの集団ではある。
がしかし、そんな事は
逆に言えば、その目的と方向性が合致する限り、これ以上強い結びつきは無いのかもしれない。
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