第183話 結局ベアハッグ
「どっ、どうぞ……お手柔らかに……」
「まっ、
お互いに正座をしたまま、言葉少なに挨拶を交わす二人。
場所が場所であれば、完全に武道の試合直前だ。
しかし、ここは太陽神殿にある俺の館。しかも天蓋付きのベッドの上。
まぁ、天蓋は関係無いか。
それにしてもダニエラさんって……。
「まつ毛
心の声が思わず口に出てしまう。
大体、ダニエラさんをこんなに間近で見るのって、本当に久しぶりなんだもん。
なんだったら、小学校以来かもしれないなぁ。
俺が中学になった頃は、割とばーちゃんの手伝いで都会の方に行く事が多くなっちゃったし。
それでも俺の家に来た時は、ちょっぴり焦げた目玉焼きとか、作ってくれてたんだけどね。
あぁそうそう。
小さい頃は良くダニエラさんに
まぁ、当時から美人だなぁとは思ってたけど……。正直、俺も東京に出るまで、あんまり意識した事無かったんだよな。って言うかさぁ。東京に来ても、結局ダニエラさんや、アル姉の様な美人には、とんとお目にかかった事が無いんだよねぇ。やっぱ、俺って恵まれた環境に居たって事なんだろうなぁ。
遠い過去の記憶を呼び起こしつつ、ダニエラさんの
……すると。
んん?
『年長さんD』に何やら新しい動きが。
なになに? 『まずは肩に手をかけて!』
……はっはぁん。そう言う事ねっ。
結局、俺の動きがあんまりにも遅いから、
流石は敏腕ディレクター。
って言うか、この緊張感っ! 本当、半端無いなっ!
ドラマの撮影現場って、こんな感じなのかな? 何しろ、本番一発の長回し一本撮りなんだから、もぅ絶対NG厳禁! はうはうはう!
俺の背中は、緊張感から来る油汗で『ぐっしょり』の状態さ。
あぁ……全然関係無いけど『
いやいや、そんな事よりダニエラさんだ。
早速俺は
はうはうはう! リーティアの時にも思ったけど、どうして女性の体ってこんなに
そして、俺の両手を通じて伝わって来る彼女の緊張。
とにかく彼女の肩が小刻みに震えてるんだものぉ! もう、プルプルしてるんだもの。ピクピクしてるんだものぉ。なに、何? この罪悪感? 俺、何か悪い事してるの? 本当は触っちゃダメなんじゃないの? 俺って、イケない事してるんじゃないのぉ?
ダニエラさんの思わぬ反応に自問自答を繰り返す俺。だけど、もちろん答えが見つかるはずも無く。
そうっ! そんな時は
早速『年長さんD』の方へと視線を向ける。
えぇっと、なになに? 『そのまま、自分の方へ引き寄せてっ!』
はいはい。引き寄せてっと。
えぇっと、それから? 『左手を背中に。右手は軽くダニエラ様の後頭部へ!』
うぉぉ。そう言う事かっ!
流石は
そう言えばリーティアを抱き絞めた時は、両手で思いっきり彼女を締め上げてしまったからなぁ。
あれじゃあ、ほとんどベアハッグ状態だ。情緒の欠片もありはしない。
まぁ、技を掛けてる本人は良いけれど、受け身の方としては
一方、
片方の手はしっかり彼女をホールドしつつ、もう片方の手では優しく彼女の頭部を支えると言う二段構えだ。
つまり、左手で彼女に安心感を与え、かつ右手では彼女の頭部に刺激を与える事で、『いい子いい子』感まで引き出すと言う、恋愛上級者だけに許された門外不出の高等テクニックじゃないかっ! しかもこれの良い所は、男性はついつい力任せに抱き締めてしまう事が多いんだけど、この方法であれば、良い具合に力は入らないから、抱き締められる女性の方に負担の少ない、とってもエコロジーな抱き締め方であると言う点だろう。
早速俺は左手をそっと彼女の背中へ。
――ピクッ!
俺の手が背中に触れた途端、
はわわわわわ! ちょっとビビったぁぁ。こっちも初心者だからねっ、突然『ピクッ』ってされたら、俺も驚いちゃうからねっ!
俺としても何だか手の位置が決まらない。その
すると、その度にダニエラさんが、俺の左手の動きに合わせて『ピクピク』反応するんだものぉ。
はうはうはう! もう、どうしたら良いの? どうしたら良いの?
と、とにかく
えぇ? なになに? 『皇子様、Good Job!』
おりょりょりょりょ。褒められたっ!
なんだか方向性が少しズレて来ている気がしないでも無いけど、ここまで来たからには途中で止められない。
今度は右手を彼女の後頭部へ差し入れると、優しく俺の胸の方へと引き寄せてみる。
もちろん彼女の方も抵抗なく俺の胸へとしな
俺の胸に自分の頬を寄せる彼女。
「はぁ、はぁ、……っはぁ」
彼女の息が荒い。
まるで熱にうなされた患者の様に、その呼吸は浅く、苦しそうだ。
ただ、先程まで固く閉じられていたはずの瞳は薄っすらと開かれ、その口元からは笑みがこぼれている。
世に言う所の『
うわぁ。女性のこんな表情、初めて見たぁぁ! それこそエロゲーでしかお目にかかった事の無い様な、大人の女性の
彼女のそんな表情に我慢の限界に達した俺は、
「もう、我慢できませんっ! ダニエラさん
俺は、彼女の頭に添えていた右手を離すと、そのまま彼女の背中へと移動。
もう、両手でがっちりホールドした上で、力いっぱい彼女を抱き締めてしまったんだ!
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