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そう尋ねると、2人の少年達はお互いの顔を見合わせ、微笑んだ。
―だっておねーさんは、お菓子をくれたから。
―俺達だって鬼じゃない。ルールは守るさ。
お菓子、ルール…。
…ああ、そうか。確かに仲間達は彼等にお菓子を…いや、『お供え』をやらなかった。
だから見逃してはくれなかったんだ…。
―早く帰りなよ。大丈夫。おねーさんは無関係なんだから。
「…そういうワケにはいかないでしょう?」
この町へ来たことは、いろんな人に見られている。
―いや、そうなんだ。お前はここには来なかった。来たのはあの6人だけだ。
「そんなことがっ…!」
思わず顔を上げて、思い当たった。
この町の人は、地元の神様を大事にしている。…ならば、そういう事実もありとされてしまうんだろう。
「…分かったわ。帰る」
ぎゅっと唇を噛み締めながら言うと、明るい少年が大きく頷いた。
―今日のことはできれば忘れた方が良い。一度は見逃すルールがあるけど…二度目はないよ?
笑顔ながらも、目が笑っていない…!
「っ! 分かったわよ! もう二度と、ここへは来ない! さようなら!」
アタシは2人の少年の間を通り、道を歩き出した。
けれど…どうしても言っておきたいことがあって、どうしようか迷った挙げ句、やっぱり立ち止まり、振り返った。
―あれ? どうしたの?
―早く行け。電車に間に合わなくなるぞ。
アタシは息を吸って、顔を上げた。
「いっ一応アタシを助けてくれて、ありがと!」
大声で言うと、今度はすぐに道を走り出した。
遠ざかるアタシを、2人はしばらくキョトンとした表情で見ていた。
―…あ~あ、残念。どうせ引き込むんだったら、おねーさんみたいな人が良かったなぁ。
―お前のその女好き、絶対父親似だな。
―しっつれーな! …まっ、否定はできないけどさ。
少年は肩を竦めると、男の子の手を取った。
―さっ、おねーさんからもらったお菓子、食べようよ! 美味しそうなの、いっぱい貰ったし。
無愛想な男の子は、柔らかく微笑んだ。
―だな。久々に大収穫だったしな。饅頭にも飽きてきたところだ。
―お饅頭だけってのも、飽きてきたよねぇ。たまにはチョコとかポテチとかアメとかさぁ、食べたいよね。
―しばらくは不自由しないだろう。…まっ、またあんな人間が現れるよう、願うことだな。
―おねーさんみたいな奇特な人、今の世の中じゃ珍しいよ。あ~あ、もう一回ぐらい、来てくれないかなぁ。今度は僕達に会いに、さ!
―…こんな体験をしといて、来る人間なんぞ普通はいないぞ。
―残念★ じゃあしばらくは、大人しくしてようか。
…お客さんが来なければ、ね?
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