8

そう尋ねると、2人の少年達はお互いの顔を見合わせ、微笑んだ。


―だっておねーさんは、お菓子をくれたから。


―俺達だって鬼じゃない。ルールは守るさ。


お菓子、ルール…。


…ああ、そうか。確かに仲間達は彼等にお菓子を…いや、『お供え』をやらなかった。


だから見逃してはくれなかったんだ…。


―早く帰りなよ。大丈夫。おねーさんは無関係なんだから。


「…そういうワケにはいかないでしょう?」


この町へ来たことは、いろんな人に見られている。


―いや、そうなんだ。お前はここには来なかった。来たのはあの6人だけだ。


「そんなことがっ…!」


思わず顔を上げて、思い当たった。


この町の人は、地元の神様を大事にしている。…ならば、そういう事実もありとされてしまうんだろう。


「…分かったわ。帰る」


ぎゅっと唇を噛み締めながら言うと、明るい少年が大きく頷いた。


―今日のことはできれば忘れた方が良い。一度は見逃すルールがあるけど…二度目はないよ?


笑顔ながらも、目が笑っていない…!


「っ! 分かったわよ! もう二度と、ここへは来ない! さようなら!」


アタシは2人の少年の間を通り、道を歩き出した。


けれど…どうしても言っておきたいことがあって、どうしようか迷った挙げ句、やっぱり立ち止まり、振り返った。


―あれ? どうしたの?


―早く行け。電車に間に合わなくなるぞ。


アタシは息を吸って、顔を上げた。


「いっ一応アタシを助けてくれて、ありがと!」


大声で言うと、今度はすぐに道を走り出した。


遠ざかるアタシを、2人はしばらくキョトンとした表情で見ていた。


―…あ~あ、残念。どうせ引き込むんだったら、おねーさんみたいな人が良かったなぁ。


―お前のその女好き、絶対父親似だな。


―しっつれーな! …まっ、否定はできないけどさ。


少年は肩を竦めると、男の子の手を取った。


―さっ、おねーさんからもらったお菓子、食べようよ! 美味しそうなの、いっぱい貰ったし。


無愛想な男の子は、柔らかく微笑んだ。


―だな。久々に大収穫だったしな。饅頭にも飽きてきたところだ。


―お饅頭だけってのも、飽きてきたよねぇ。たまにはチョコとかポテチとかアメとかさぁ、食べたいよね。


―しばらくは不自由しないだろう。…まっ、またあんな人間が現れるよう、願うことだな。


―おねーさんみたいな奇特な人、今の世の中じゃ珍しいよ。あ~あ、もう一回ぐらい、来てくれないかなぁ。今度は僕達に会いに、さ!


―…こんな体験をしといて、来る人間なんぞ普通はいないぞ。


―残念★ じゃあしばらくは、大人しくしてようか。

…お客さんが来なければ、ね?

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