神隠し

hosimure

噂のオバケ屋敷で起こったこと

ガタンゴトンっ…


電車の振動が体を揺らすたび、心が重くなる。


「はぁ…」


アタシの周囲には、楽しそうな友達の笑顔がある。


今年高校に入学したばかりで、みんな知り合ったばかりなのに、仲が良いと評判。


男女入り混じったグループの中に、アタシはいた。


人付き合いが苦手なアタシは、それでも浮いた存在ではいたくなかった。


だから中学生の時、同じクラスだった女の子に頼んで、このグループに入れてもらったのだけど…。


…ちょっと後悔していた。


思い出すこと一週間前。


そろそろイロイロなことに慣れ始めた仲間達は、刺激を求めはじめていた。


だけどここは田舎で、若者が遊べる場所なんて限られていた。


そのうち、1人の男の子が言い出した。


彼は電車で通学しているのだが、窓から見える空き家がどうやら『出る』と評判らしい。


なので肝試しに行こうと言い出したのは、アタシ以外の全員だった。


多数決で決定。


肝試しは次の休日に、と。


とっとと予定は組まれてしまった。


何とかして断ろうとも思ったけれど、結局言い出せず、アタシは仲間達と一緒に電車に乗っていた。


やがて、言いだしっぺの彼が窓を指差した。


そろそろ例の空き家が見えるはずだ―と。


仲間達は意気揚々と、身を乗り出し、窓の外を見ようとした。


アタシは遠慮したかったけれど、仲間の1人に腕を掴まれ、引っ張られた。


アンタも見てみなよ―と。


イヤイヤながらも外を見続けると、電車は森の中に入った。


木々が次々と流れる中、ふと木の姿が消えたかと思うと、一軒の大きく、そして古い和風の屋敷が見えた。


けれどそれもすぐに流れてしまい、仲間達は残念そうに席に戻った。


一瞬だけど見えたあの家…。何だかイヤな感じがした。


古くて大きい屋敷だったせいか、暗くて重い雰囲気があった。


見ただけで背筋が寒くなるような…そう、純粋な【恐怖】を感じた。


霊感なんてアタシには無いハズだけど、あそこはヤバイ気がする。


でも仲間達は何も感じなかったようで、明るい笑顔に戻っていた。


…これじゃあ口を出しても、周囲を白けさせるだけだ。


アタシは周囲に悟られないよう、静かにため息をついた。


やがて電車は駅に着いた。


好奇心に満ちた眼で歩いていく仲間達の後ろ姿を追いかけながら、周囲を見回して見た。


辺りに民家はあるけれど、田んぼや畑に囲まれていて、一軒一軒が遠い。


…交流あるのかな?


疑問に思っていると、喫茶店を見つけた仲間の1人がお昼にしようと言い出した。


そして流れるように、喫茶店に入った。


喫茶店には優しそうな二人の中年男性と女性がいた。


各々メニューを見ながら好きに注文した後、男性に思い切って話しかけてみた。


あの空き家について。


すると男性の笑顔が曇った。


どこか困り顔で、アタシ達に肝試しに来たのかと尋ねてきた。


慌てて仲間達が否定するも、信じてはいないようだった。

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