街と人のあいだに

あきのななぐさ

第1話陽だまりの中で

線路沿いの道を歩いていく。


今日はちょいと遅いが、歩く分には問題ない。それに太陽が出ている時の散歩は、ここが一番いいのさ。朝は朝、昼には昼の良さがあるように、その変化にあう散歩の道があるってもんだろうね。

そうさ、何事にも変化がある。それは人も街も同じだろうね。時代と共に変わりゆくのは定めというもの。でも、ここはあたしと一緒で、その中でも変化が少ない方だった。

なにより、年寄りに優しいのがいいさね。最近はもうないけど、アイツらがいた頃は老いを感じてしまったよ。


我ながら笑える話だけど、それも昔話だね。


でも、いったんとった年は元には戻らない。正直、あたしも年だ。

時々腰を落ち着けさせるのに、しっくりするレンガ造りの植え込みや、歩くのに苦痛にならない歩道が、気持ちよく散歩するうえで重要なのは言うまでもないだろう。そして、車がほとんど通らない。自転車はよく通るけど、端を歩いている限りぶつかることはない。そして背の高い建物が、自分の影を道に落としてくれている。

苦痛がない。危険がない。心地いい。


本当に、この道は年寄りが散歩するにはうってつけの場所だね。

どれ、丁度いいのがいるから、一緒に一休みしようかね。こうして、のんびりと過ごすのが、今のあたしの一番のお気に入りなのさ。


心地よい風が鼻をくすぐる。なんだ、覚えのある声が近づいてきたじゃないか。

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