スランプライターと的になったJK
エホウマキ
玲間凛華の初日の登校風景
あたしの名前は
中学生の頃は地味でダサいやつだったけど、引っ越しを機に今までのイケてない自分は捨てた。今日から私はファッション誌でモデルをしているようなきらびやかなJKになるんだ。
家を出る前に鏡で自分の姿をチェックする。
「髪型ヨシ、メイクヨシ、制服ヨシ。うん、どこから見てもイケてるJKだ…本当にあたしなのか?」
自分を変えたくてあたしは慣れないメイクやヘアアレンジを必死で勉強した。その結果昔の自分とは真逆のあたしが鏡に映っている。
「いや、これがあたしなんだ。うん、わたしはイケてるJKなんだ!よし!行ってきまーす!」
外に出ると太陽があたしの入学を祝福するかのように暖かい光を私に浴びせてきた。
その光を浴びながら通学路を歩いていると、ちらほら私と同じ学校らしき高校生が見えだしてきた。
友だちを待っているのか、男子高校生の二人組が公園の前でだべっている。
あたしの存在に気付くと二人組は会話を止め、あたしの方をじっと見た。
少しの前のあたしだったら恥ずかしくなって顔を赤くして早歩きでその場から去っていただろう。しかし今のあたしは何食わぬ顔でそのまま通り過ぎる。
通り過ぎたところで後ろから声が聞こえてくる。
「おい!今の女のコ見たかよ!チョー可愛くね!?」
「見た見た!すっげー可愛い!てか、あの制服俺らと同じ高校じゃね!?」
「うっわマジじゃん!やっりい!あんなモデルみたいなコと一緒の高校とかチョーツイテル!」
「ほんとそれなー!」
あたしを絶賛する声に思わず顔がにやけてしまう。二人組以外にも道行く人々はみんなあたしを羨望の眼差しでみつめる。ああ!頑張って可愛くなってよかった!
しばらく歩くとY字路の合流地点に出る。その先があたしが今日から通う高校だ。
ドン
合流地点に出たとき、私はもう片側の道から出てきた人にぶつかった。
「あっ、ごめん」
反射的に誤ったがぶつかられた人、というか男子高校生は何の反応もせずあたしに背を向けたままふらふらとした歩みを止めない。もしかしたら頭をぶつけて朦朧としているのかもしれない。
「ちょっと、あんた大丈夫なの?」
「……」
全く反応しない。でも倒れこむような気配もしない、つまりあたしを無視しているわけだ。少しカチンときた。
「ちょっと!人が心配してんだから大丈夫なら大丈夫って言いなさいよ!」
肩を掴んでグイっと振り向かせると、私は絶句した。
少女マンガに出てくるようなイケメンだったから…じゃなくて、黒々とした隈のある顔が充血した眼であたしを睨み付けているからだ。
「……僕は大丈夫だ。だからその手を引っ込めてくれよ…」
「え、あ、ごめん…」
肩から手を離すと男子高校生はさっきと同じようにふらふらとした足取りで高校に歩いて行った。
私はというと、呆然としてしまいしばらくその場で立ち尽くしていた。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴って私は我に返った。
当初の予定では初日から遅刻して他の人とは違うアピールをするつもりだったが、長年の習慣が抜けきっていなかった私は、ついうっかりダッシュして遅刻を回避してしまった。
その後、体育館で入学式をし、教室でお決まりの自己紹介をする流れになった。
初日はみんな緊張しているから似たり寄ったりの自己紹介しかない。そう思ったので居眠りでもしようと思ったが…
「よし、じゃあ先生の次は---君!君から自己紹介始めて!」
「……あ、はい。僕の名前は
さっきの男子高校生が同じクラスにいたのですっかり目が覚めてしまった。
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