VR 母 36

只木のりあ

第1話 マンガかよ

 母が、死んだ。


「ではこれから36時間となります。

 有意義な時間をお過ごし下さい。

 素敵なお引継ぎを!」


 ほんのりと向こう側が見える『母』が『出現』した。

『母』は目を開け

「え?え?どうして?お客さん?コーヒー淹れなきゃ!」


 壁にもたれてぼんやりとしていた弟の

 嗚咽を漏らす、目頭を押さえる、膝から崩れ落ちる、という動作を

 流れるような動きだな、マンガかよ。と思う。


 父は怒ったような顔のまま

「声にならない」

 小さい声でそう言うと

 矛盾した物言いの恥ずかしさも混ざった赤い顔をうなだれて肩を震わせた。

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