落選にしてグランプリ
東京の大学と大阪の芸術大学との連携のための覚書締結。
そしてわたしたち『チーム』の稼働。
柿田教授からひとつの条件をつけられた。
「WEB小説コンテストでグランプリを獲ること」
「まあ、それはそうだよね。
「今総合ランキングで4位」
「うーん」
「うーーん」
「うーーーん」
「うーーーーん」
不毛な唸り合いはやめよう。
具体的に話そう。
「
「はい?」
「キスシーン入れたら、きっとランキング上がるよ」
「ほ、ほんとにキスしなくてもキスシーン書けばいいじゃない」
「なーんかリアルさに欠けるんだよね」
「そ、想像で書けば? ・・・あっ」
おっと。
わたしは気にしないけど、わたしが南条に無理やりキスされたことを恵当は気に留めたようだ。
ん?
思わずわたしはニヤあ、とする。
「恵当」
「な、なに?」
「ジェラシーも、ポイント高いよね」
わたしは恵当のジェラシーを書いた。
それも、『もう取り返しがつかない』ぐらいの大げさな表現で。
キスだけじゃなくって、別のオマケもつけて。
『彼はわたしの過去に嫉妬した。
わたしがそういうことを経験済みだという事実に。
彼はじっとひとりで悩んでいた。
悩み抜いて、いつもはテクニック上絶対に弾けないぐらいの難曲を、怒りをエネルギーにして凄まじい指のタッチで弾ききっていた』
「ふふーん。やったね、2位!」
「・・・・・やめて欲しかった」
「なんで? 人間の本質を書かないと」
とにかくも明日が読者投票のポイント集計日。勢いから行けば1位の作品よりもこちらの方に分がありそう。
「明日の正午だよ。楽しみだねえ」
結果。
落選。準グランプリ。
ところが。
「れ、嶺紗! いつの間にこれ!?」
「ああ。
「で、でもこれって」
「そう。原文のままだよ」
「ああ・・・」
「ふふふ」
実はわたしが準グランプリとなった長編部門の他に、短編部門も同時開催されていたのだ。
そちらの方は読者選考ではなく、運営さんと編集さんの選考でグランプリが決まる。
『短編部門グランプリ:「恋文」
作者:レイサ&ケイト』
わたしと恵当との狂おしいまでの愛が込められたラブレター。
エントリーしておいてよかった。
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