聖夜にして不純なバイト三昧!

 わたしは卑怯者かもしれない。

 けれどもなんと言われようと人生を切り拓くためにはあらゆる選択肢を残しておきたい。


「合格です」


 12月中旬、まずは東京の志望校の文学部AO入試に合格した。

 恵当との彼氏・彼女関係をネタに書いて投稿している恋愛小説はまだ選考途中だけれども一定のPVやポイントを得ていることと、内容そのものを評価してもらえたようだ。

 それだけじゃない。

 わたしが雑多に投稿してきた武将や武士をモチーフにした短編の戦闘シーンが面接官から褒められた。


「執拗で素晴らしい」


 執拗、というのが褒め言葉だと初めて認識したけど、つまりこだわりのある描写がウケたらしい。

 偏執狂的なんていう面接官もいたのでちょっと微妙だけど。


「入学の意思決定は本命大学の合格発表の後でも構いません」


 ありがたい。


 そしてなんと大阪の芸術大学の音楽学科のピアノ専攻科も合格した。

 面接会場はピアノ部屋で面接官たちから、


「何でもいいから自由に弾いて」


 と言われたので、わたしは敢えてクラシックは選ばなかった。

 まずは祖母を真似てクイーンのボヘミアン・ラプソディを弾いた。

 続けざま弾いたのは、ガンズ・アンド・ローゼズの、ユー・アー・クレイジーだ。

 リード・ギタリストであるスラッシュのソロパートも完璧にピアノで再現すると、


「ファンタスティック!」


 と面接官全員立ち上がって拍手してくれて、その後の言い草がこうだった。


「キミ! 稼げるよ!」


 そしてこちらも入学するかどうかは本命大学の結果の後で良いと言われた。


 ただし、問題が。


「入学金は年明けまでにね!」


 両方ともいわゆる推薦枠のようなものだから入ってからの学費は免除される。


 けれども、入学金はまあ保証金の意味だとか、そもそもわたしの選抜のプロセスにも費用がかかっているわけだから当然だろう。

 ただ、父親も転職して働き始めて間もないし、祖母の介護スタートも介護認定を受けられたとはいえ、まとまったお金が初期投資として必要となった。


「ああ・・・割のいいバイト、ないかなあ?」


 切実、なのだ。


 バイト情報アプリで条件を入れて検索してみた。


『夜間道路工事作業員』


 土木女子なんて言葉もあるぐらいだし、体力にもそこそこ自信があるし、こういう仕事が社会を支えるコアの仕事だって思ってるからやってみようかと思ったけれども、恵当に止められた。


「それなら僕がやる」

「恵当。中1でバイトは法的に無理」


 まあ、恵当が止めるのももっともだと他にも探してみた。


「新薬の投与検査」

「危険すぎるよ。却下」

「キャバレーのピアノ奏者」

「いいと思うけど深夜でしょ? 却下」

「メイドカフェ・スタッフ」

「うーーーん」

「どしたの、恵当?」

嶺紗れいさのメイド姿、見てみたいけど・・・でも他の男には見せなくない! 却下!」


 なんだか単にじゃれあってるだけみたいになって来た時、それがスマホの画面に浮かび上がった。


「『リアルサンタ』」

「え? なに? 嶺紗。リアルサンタ、って」

「どうもほんとにサンタクロースやるバイトみたい」

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