年齢差6歳の青春小説が欲しい
naka-motoo
序章:女子高生にしてワナビ
あ。
わたしは何度も投稿画面をチェックしなおした。スクロールして、それだけじゃ足りなくてページダウンのキーで画面を下に移動させて。
やっぱり、ない。
何がないかというと、『青春』というジャンルが、小説投稿サイトに、ない。
わたしはシャットダウンしてタブレットPCを、ぽすっ、とソファの上に投げた。
「出かけてくるね」
そう声をかけると母さんが間髪入れずに返してくる。
「受験生でしょっ?」
手をひらひらさせて、ストレッチストレッチ、と意味不明のつぶやきをしながらマンションのドアを開けて春風の中に出た。
春風といっても、夜風。
夜風かつ月光。
ちなみに文学少女を自認するわたしは、月光よりは月影という表現を推奨したい。自分に。
『青春』、の近似値を考えてみる。
「『ハイファンタジー』まさか。『現代ファンタジー』地に足着いてるようで着いてない。『現代ドラマ』うーん。『エッセイ・評論』ドキュメンタリーじゃないんだから。『児童文学』児童・・・? 」
そうこう言っているうちに、逢瀬の場所に着いた。2人の家の中間地点にあるコンビニ。
「こんばんは」
彼の方から挨拶してくれた。
まあ、今日も礼儀正しくてね。嬉しい。
「こんばんは」
わたしもそう言いながら、ガラス張りの外に向かったカウンターのイートインに並んで座る。彼は今日も強炭酸水のライム。
わたしは、ピールの苦味を足したアップルタイザー。瓶のやつが好き。
「あのねえ、
「なに?
「なかったよ。『青春』てジャンル」
「え・・・やっぱり死語なんじゃ」
「青春が?」
「うん。少なくとも『青春小説』は死語なんじゃない?」
「・・・寂しい」
「しょうがないでしょ。嶺紗、じゃあ、次点のジャンルは?」
「言ってもいい?」
「もちろん」
「恋愛」
さすがに恵当でも動きが止まるか。
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