5月17日(月) 広島市中区東白島町にあるナポリ料理店「Trattoria Pizzeria polipo」のテイクアウトを食べる。

広島市中区東白島町にあるナポリ料理店「Trattoria Pizzeria polipo」のテイクアウトを食べる。


雨は昼にはあがったので座れるほどベンチは乾いていたから仕事帰りにどこかしらを探して腰を落ち着けることもできただろうが、昨日の午後にコンビニで買ったチャミスルに酔ってアカデミイ書店に寄って短編集はあるか店員さんに訊ねたところちょうど良さそうな本を教えてもらえたのでそれを買い、今日は短編集を読んでのんびりと家を過ごそうと思っていたところ、夕方に我が家の大臣から「Trattoria Pizzeria polipo」さんのテイクアウトを買って帰ると連絡があった。


見るからに山盛りの前菜は店で食べる量のそのままかもしくはそれ以上に詰められたプレートになっていて、日本にやってきたからその土地に適応して変化するイタリア料理とは異なるオリーブオイルの大きな懐にたっぷり風味を含ませた伸びやかでまっすぐ艶のある酸味も幅を豊かに広げたり、タコも、イカも、イワシも、ハムも、サラミも、テバモトも、細かさを打ち消した素材の大きさがのびのびとしている。


だから、おいしい、おいしい、おいしい、と口走りながら、職場の話や、世間の事や、自分に合ったサンドイッチや、シルビオ・ベルルスコーニや愛人について語り合いながら食べた。


ポルケッタというピッツァはスナップエンドウがみずみずしくしゃきしゃきしていて厚いローストポークはチャーシューとは異なる鮮度の良い豚の風味に肉汁溢れさせる食感が歯に伝わり、ンドゥイヤの赤い辛みはサラミにも通じる熟成された砂漠を感じるようでありながら体験したことのないシロッコという南風を連想させる熱意があった。


手はベトベトでギトギトのままワイングラスをつかんではフォークやナイフではない箸を使って前菜を食べていく間は、会話も作法もだらしなくテーブルを散らかすことこそ大らかな家庭の時間となって運ばれてくる料理を気にすることなくしまりのない夕食を続ける。


そしてカップ一杯に入ったティラミスを何も気にせず無心に喋り続けて口に入れていく。


飲んで食べてばかりの遊びではなく本を読んで自分の目的に適った事をしていこうと気を引き締めていたものの、やはり美味しい食事は心身を心底明るくさせるので続いていたイタリアの要素は今日も家庭に期せずして訪れて大振りの動作にやたら大きな声で喋って笑ってベルルスコーニにプーチンと田中角栄に今の日本の政治家を比較して大々的なデモンストレーションの起こらない今の日本の大人しさを考えてしまう。


政治の事は普段ほとんど口にしないがラジオの影響かさすがに今の状況については口走ってしまい、何が亡霊で幽霊で、演劇のような病や喜劇を現実の大役に待ち望んでしまう。


不正をしてもかまわない。それ以上の実りある成果があるなら。こんなことは不謹慎な意見かもしれないが、連日イタリアを一方的に受けて感じた気分からは「Trattoria Pizzeria polipo」さんの前菜やピザだけでなくドルチェの甘さや大きさも含めた幅も底も太い魅力的ある人物を欲してしまう近頃の世間だ。

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