4月26日(月) 広島市中区本川町にある書店「READAN DEAT」で「『恥ずかしい料理』写真展」を観る。

広島市中区本川町にある書店「READAN DEAT」で「『恥ずかしい料理』写真展」を観る。


写真展があると知ったので仕事帰りに「READAN DEAT」さんへ寄った。


トーストの上にキュウリだけが乗るシュールな写真のインパクトは、「恥ずかしい料理」という名の写真集から色々な想像を膨らませる前に、自分の食卓でのみすぼらしい食べ物が想像された。


表紙と写真の違いには、トーストの耳の細かい皺の陰影から量感が異なり、平面と立体の単純な見方の差から、対象の質感と温もりの切り取りを感じられた。


しかし今日の写真展は作品の質をしっかり観るよりも、店主さんの話からこの写真集の中身を知る楽しみがあった。本に収められている“恥ずかしい料理”は写真で観る限りあまり恥ずかしくなく、ポトフのような煮物やアオリイカの沖漬けなど、パンや酒を合わせるのに最適な調理がされているようで、板場に立つ料理人さんの大根の切り方と煮立つ鍋などは、いったいどこが恥ずかしいのかと首を傾げてしまう。


そのストーリーは写真集にあるとのことで、単に恥ずかしいと決めつけることのできない各家庭のルーツと人間関係によって答えが生まれた料理となっているらしく、プライベートの陰に隠れてしまいたい料理ともいうことができるのだろう。それぞれの内容を写真集の文章で細かく追っていないのでフォーカスされた料理の前後と背景は端的にしか知ることはできなかったが、料理は心というように、祝いなら祝いらしく、疲れた日なら疲れた日らしく、しめやかな日ならしめやかな料理が食卓にのぼることだろう。


そんな料理の背景から人物像を浮かばせる、とても想像力のかき立てられる写真展となっていて、来訪した人は名前の記入と一緒に自分の持っている恥ずかしいレシピを書くことができる。


ちなみに自分は、“すりおろしたキャベツ、大根、リンゴ、出がらしの茶葉を混ぜる”のようなレシピを書いた。その背景には胃腸虚弱があって、キャベツの酵素による胃腸の修復、大根の酵素による消化の促進、リンゴのイメージによる健康促進、そして捨てるには勿体ないから茶葉を混ぜている。ただし、日によっては山芋が加わったり、タマネギが入ったり、レモンもあれば菜の花なんかもすりおろされ、時にはジューサーによってスパイスやヨーグルトも一緒に混ぜられるレシピだ。これは恥ずかしいよりもゲテモノなので、家内からは生野菜の食に関して夫婦喧嘩に発展しそうな非難をされる。そして知識のある人から見れば無知であって、そんな蒙昧を一人楽しんでいる節もある。料理と生活は偏屈な者にとって時に不条理なのだ。


そんな風に自分の持つレシピを考えて、店主さんとすこし話せる写真展となっており、写真集そのものは立派な料理本としての風合いが各ページに宿り、コンセプチュアルな内容として楽しく頭を働かせられる質に仕上がっているので、食欲のない人は是非訪れて欲しいとお勧めできるほっこりしっとりまじめな企画となっていた。料理は個性、それが家でも人でも個であることには変わりない、内面の面白さを実感して欲しい。

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