4月15日(木) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで田坂具隆監督の「五人の斥候兵」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで田坂具隆監督の「五人の斥候兵」を観る。


1938年(昭和13年) 日活(多摩川) 72分 白黒 16mm


監督:田坂具隆

原作:高重屋四郎

脚色:荒牧芳郎

撮影:伊佐山三郎

録音:平林龍雄

出演:小杉勇、見明凡太郎、井染四郎、星ひかる、伊沢一郎、長尾敏之助、佐藤円治、西春彦、潮万太郎、渡部清、菊池良一、井上敏正、土田義雄、北龍二


16mmフィルムの平面性を前面に思い知らされたこの作品は、規模は異なれど、ボンダルチュク監督の「バトル・フォー・スターリングラード」を連想させるラストの出陣シーンになっていた。


古代の壁画の経年劣化を持ち、モノクロの濃淡は水墨画だ。音声はもはや能楽師の面の裏からのように聞こえにくく、古文と異なった軍隊で使われる厳めしい台詞は慣れない者にほとんど意味をつかませない。


登場人物に違いはあっても同じ軍服となると若いアイドルグループを観るような一体感があり、ぼやけた画面は顔を覚えさせない。個性よりも数多性に盛り上がる内容は田坂具隆監督の意図かわからないが、画質がその作用を担っていることは疑えない。


「五人の斥候兵」とあるので五角の人物関係を探すが、口髭の厳めしい明治時代の写真に見かける隊長の登場することが多く、自分の意識が下手に向かって個人の内面を観させようとしない。


というのも一時でない睡眠不足に一日が支配されていたので、弱った感受機能がなにも汲もうとしない。


結局映画は斥候兵の帰還をクライマックスに置き、何度も登場したアーチ形の門を通って戦場へと繰り出される。黒澤明監督にも散見される走ってくる兵の報告とパンショットがあり、対話にも様々なアングルはあり、斜め上からのショットなど画面は単調ではないが、自分の頭がそれとなっていた。


描かれるのは戦場だ。劇中に“支那事変”と言われるように、アメリカと戦う前の時代が色濃くあり、国民に対し兵士の苦闘を時事で知らせるようだ。


戦争は悪いことだ。そんな言葉の前に、国とイコールする家族の為に戦う個人が描かれていて、その雰囲気はボンダルチュク監督の描いたロシアの防衛意識と結びつく気がしたのだろう。兵士の顔は見分けつかないが、配給された煙草“バット”を仲間達で一服するシーンは、なんともいえない情感があった。

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