3月14日(日) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでクロード・ソーテ監督の「すぎ去りし日の…」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでクロード・ソーテ監督の「すぎ去りし日の…」を観る。


1970年 フランス、イタリア 85分 カラー Blu-ray 日本語字幕


監督:クロード・ソーテ

脚本:ポール・ギマール、ジャン=ルー・ダバディ、クロード・ソーテ

原作:ポール・ギマール

撮影:ジャン・ボフティ

音楽:フィリップ・サルド

出演:ロミー・シュナイダー、ミシェル・ピコリ、レア・マッサリ、ジェラール・ラルティゴ、ジャン・ブイーズ、ボビー・ラポインテ


今回のミシェル・ピコリ特集をとある人が知って「ロビー・シュナイダーが出るんだ」と言われても、「へえぇ、有名な女優なんだ」と自分は思うくらいだった。パルム・ドール受賞作品という肩書きも含めて期待していた今日の映画は、約一時間半という上映の中に大きな出来事は起こらなかった。冒頭に自動車事故が配置され、タイトルロールで叙情的に映像は巻き戻され、それからミシェル・ピコリとロビー・シュナイダーがベッド上に裸で登場すると、昨日のゴダール監督同様にフランスらしい男女間の愛情は描かれるが、スノッブな詩は引用されることなく慎ましいくらいの情緒で表現される。


昨日の映画と比べたから地味に思えたのだろう。前置きから追憶らしい編集となっており、時折事故のシーンが挿入されると運転シーンにもの悲しい音楽も加わってしんみりすることもあったが、むしろそれほど挟まなくてもよいと自分は思ってしまう。そのあたりは好みの問題だろうが。


奇抜な展開や不自然なほどの情動的なアクションはなく、あまりにも丁寧に物語は進んでいき、事故を起こす男を中心とした家族や恋人関係も画面は表される。それらはあまりにも当たり前の光景としてあるようで、やや退屈と思えるほどだからこそ、ラストまで向かう後半の死と生の狭間の独白に一抹の寂しさと哀惜を覚えるのだろう。


今回はミシェル・ピコリ特集となっており、今までにこの俳優が登場した映画作品を観たことはあるのかもしれないが、今回こうしてスポットを当てて観ると、よくわからないのが正直なところだ。日本人に比べて外国人は姿形だけでなく動作や仕草がそもそも異なり、考える頭や癖なども極端に異なる場合がある。そんな人種の違う外国人の演技に対して、この人は個性が出やすい、この人はうまく役柄にはまっている、などの感想を持つほどの眼力は自分にない。今日まで観た3作品から思うのは、目立ってアクのある俳優よりか、派手さはないがスムーズに役柄に溶け込み、どことなく味わい深い顔立ちは時に激情を起こすが、すこしぽっとするくらいに見えながら沈思している内面があるようで、表面的な顔立ちの良さにはない穏やかさと、立ち位置の安心感があるようだ。


ちなみにロビー・シュナイダーの登場する作品は覚えていないか、それとも観たことがないのかもしれないが、ロビー・シュナイダーを描いた映画は数年前に観ていたことを思い出した。今日も観た映画をすっかり忘れる自分に気づき、やはり記憶よりも瞬間を生きようと、死の手前でも些細な事を気にするミシェル・ピコリを関連づけようと思うものの、何も浮かばずに去っていく生を自分に感じる映画だった。

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