3月6日(土) 広島市中区本通にあるパブアンドバー「PUB and BAR PIC」で飲む。
広島市中区本通にあるパブアンドバー「PUB and BAR PIC」で飲む。
人はなぜ酒を飲むのか、方法と理由は色色あるが、イリュージョンを見たいのも一つのわけだ。
気になっていたバイロン卿のラベルのジンを飲みに来るのも、酒と詩情はたやすく協同する通り、インスタントな気分に浸りたくなるからだろう。
実際酒は魔物だと感じるのは、魔女が壷に煮立て、鼻の長い錬金術師が丸いフラスコに蒸留するような代物だろう。それに近いのはアブサンの幻想で、魔術的な香のする酒は耳を切る噂さえ立てるほどだ。
バイロン卿の詩情は断片しか知らずとも、高高と声を上げる熱情はたやすく人を感染させる。アザミの苦みがあるというこのジンは飲みやすく、熱っぽい癖は少なく、メランコリーにさせるハーブ香は乏しい。それよりも少し前に飲んだアルケミエの異なるグリーンのアブサンは口内に張りつき、からっとした薬っぽさのあとに強烈な余韻が吹き荒れる。
そしてキュブラーのアブサンは鼻に誤魔化されて甘さが立ち、言われて鼻を指でおさえれば、狐につままれたように言葉を鵜呑みする。
綺羅びやかに並ぶボトルを眺めて空想するのは、ガラスが生み出すファンタジーだろう。バーは種種の魔法を瓶に詰めて待っている。感想を書く頃は高い度数にすっかり幻惑され、水と油のマジックによる白濁に実験的な情感が湧き、この店の第一印象同様にダンディズムとナルシズムの混同が高らかに吹き上がる。
そんな一時を「PUB and BAR PIC」さんは与えてくれる。バーにしかできない雰囲気と酒がある。今日はそれがよく身にしみた。
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