2月22日(月) 広島市中区榎町にある日本料理店「酒と肴 一十」で飲んで食べる。

広島市中区榎町にある日本料理店「酒と肴 一十」で飲んで食べる。


今日はケーキを買っておとなしく帰るつもりが、目当てはどこも休みだった。


仕方なく空手で家に帰り、二連休のあとの暇と体力を持て余してひさしぶりに掃除機をかければ、ベンチに座りたくなる。別に毎日書くと決めているわけではないが、いつからか毎日続いているのを今日で途切れさせたくないと思っていると、やはり酒が飲みたくなる。


こんな陽気で明日が休みとあり、時間短縮も終わってのんびり席に着くこともできるなら、飲みに行かないと今夜はバチが当たるだろう。


というわけで気になっていたが、自粛期間中休まれていた「酒と肴 一十」さんに明かりが点いていたので入った。


妻も来るというので寫楽の冷酒を注文して気長に待つ。掃除している最中は時計を気にして20時の区切りに間に合わせようとしていたが、途中で営業制限は今日から解禁になったと気がついたので、焦って頼むことなく来てから料理を選ぼうと悠々と座る。


そうなると注文は見境がなくなる。サク呑みセットを注文すれば、前菜3種に味覚は研ぎ澄まされる。粒の大きいしっかりしたイクラを食べるのは初めてと思うほど皮に弾力がり、ナマコも良い食感と味付けで、お浸しはとにかく澄んでいる。


冷酒の品揃え通り、味の仕立ては鋭敏で気品がある。甘みがふっくらした餅のような甘ささえ感じる醤油には、酢の加減が清冽な〆鯖、綺麗な旨味の鯛、それに柔らかな鰆が良く合っている。


肴一品は焼きあなごと牛のイチボで、2000円のセットにしては味の端正な仕上がりはお値打ち価格だろう。


そんな料理に惹かれて追加した芋万十は出汁が温かくふっくらと口に広がり、炙りものを欲しがった自分の要望に応えてもらったエイヒレは、焦げの加減がよい。


亀齢、賀茂鶴、龍勢など4合以上飲んだ腹の締めには、鯛味噌の茶漬けと鯛出汁のラーメンとなり、どの料理にも基本としてある澄み切った味わいは、洗練、繊細、華やかさが甘美に備わっている。


昨年の十月に開店してまもなくコロナウィルスによる自粛期間に襲われ、休み明けの再開の今日は特別な心持ちだったと店主さんの話が耳に入る。営業と休みの選択に葛藤はあったとしても味の作りは一貫してあり、濁らない切れ味は磨かれた品の良さがある。


晩酌セットでさっと帰るつもりだったが、大名のように飲み食いする人の相伴となればケチなままでは帰れない。十日市界隈で目立つほど和食の伝統と品格を持った疑いのない店で、かといって構えることなく気軽に入ることのできる品揃えとなっている。


きっとこれからはお客さんがついてきて、なかなか入れない店になるだろう。そう思えるほどこだわり抜かれた良点は艶やかさを持っていて、とても満足できる美味しい店だった。

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