2月11日(木) 広島市西区横川新町にあるコジマホールディングス西区民文化センター・スタジオで「詩人の恋 リーダークライス 全曲 演奏会」を聴きに行く。

広島市西区横川新町にあるコジマホールディングス西区民文化センター・スタジオで「詩人の恋 リーダークライス 全曲 演奏会」を聴きに行く。


バスバリトン:重田理

ピアノ:松尾英都子


シューマン:リーダークライス作品24

シューマン:詩人の恋

アンコール

2曲(曲名聞き取れず、判別つかず)


入場無料で聴けると知るとつい一瞬訝ってしまうが、生で聴いたことのない曲なので足を運んだ。


人伝に聞いたことがあるのはエリザベト音楽大学の声楽の質で、広島市内だけでもオペラ公演を行う団体があり、最近もKammerchor“Hiroshima Kantorei”でドイツ・レクイエムを聴いたが、おそらく多くの人達がエリザベト音楽大学に関連しているのだろう。本日の二人も名高い大学を基礎とした広島での活動の経歴があり、紹介通り立派な音楽を聴くことができた。


リーダークライスはそれほど耳馴染みがないからかもしれないが、歌い始めの重田さんの声の通りはやや弱く感じられた。「僕の悲哀の揺籠よ」あたりから声にも迫力と表現が勝り、20分も経たずに終わってしまったが、これだけでも良い所に来ることができたと思った。


ドイツ語の歌詞はないが和訳がついており、演奏前に一通り詩を読んで演奏中に曲名だけ確認するだけでも歌われる情感の理解に役立つらしく、何度か聴いたことのある「詩人の恋」となると、自分の中にある判断基準を置いて聴くことになった。最初の「美しい五月に」から喜びは表れ出て、「ライン川に、聖なる流れに」を歌う頃には表現力は顔にも体にも覿面に表れ、声も澄んだ美しさが通り出していた。「私は怨まない」や「それはフルートとバイオリンだ」も良かったが、「私は夢の中で泣いた」がとても好ましい情感で歌われていた。


少しでもハイネの詩を感じられればと思っていたら、堂々たる声楽を聴くことができた。生の演奏会が必ずもたらしてくれるのは、わからないながら音楽の持つ細部への学びで、例え和訳でもドイツロマン派の詩情がどのようなものか体感できる。繊細で豊かながら、暗く冷たい悲哀がこもり、春よりも夜や暗さに心は惹かれてしまう。


演奏会は休憩も含めて約一時間で終わってしまったが、その中に多情な心が細切れながら披露されて、決して不要不急でない日常における芸術への欲を満たしてもらった。

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