1月23日(土) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでトラヴィス・ウィルカーソン監督の「誰が撃ったか考えてみたか?」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーでトラヴィス・ウィルカーソン監督の「誰が撃ったか考えてみたか?」を観る。


2017年 アメリカ 90分 カラー・白黒 Blu-ray 日本語字幕


監督:トラヴィス・ウィルカーソン


白人至上主義を扱ったこの作品は、今日の自分にとって真っ先に趣味の好き嫌いで判別される作品だった。監督の曽祖父が起こした黒人男性射殺事件を探っていく内容は、私小説に特有のはっきりした好悪を抱かせる側面があり、監督のナレーションで物語が語られる表現方法は、昔のゲームソフトであった「弟切草」のようなサウンドノベルとして新しさよりも、むしろベストセラー小説らしい展開の古さを持ち、アメリカ南部のアラバマ州を主にした内容は映画「アラバマ物語」を冒頭に置いた対比を軸に、甘ったるいロードムービー基調にややくどいリフレインとノスタルジックなギターサウンドでアメリカらしい効果を上げ下げしている。


いかにもアメリカ人、という監督自身の顔があまりに作品に表れてしまい、白人至上主義をわざわざ好んで暴き、断罪するような観点こそが一面的な考え方だろうと、一方に加担するような内容として飲み込みそうになるが、作品への退屈さを理由に自分こそがこの作品を片側の人間として見損ないそうになっていた。


苦手としたのは、音楽とスクリプトの挿入がやや単純であって、映像の鮮明さに描かれる内容のミステリー性は表れているのだが、ナレーションの文学性があくびのついた詩情を持ち、緊迫感を生み出す語りがむしろ鼻白みを生んでいたことだろう。証言する人物は限定されており、採取した言葉はほぼ監督自身に語られることによって単調さが生まれてしまい、風景をつなぎ合わせた映像も作為として風情を持っているが、ブラックな画面と言葉に頼る頻度が多く、後半になればなるほど色調を変えた画面と長ったらしい道路とナレーションに飽きてしまった。


時たまあるのは、昨日の自分が鑑賞したらいったいどのような感想を持ったかという、鑑賞者自身の感受性の疑惑だろう。映像美を称賛しただろうか、それとも集められた材料と曽祖父を浮き彫りにする手法だろうか、もしくは家族の証言の食い違いを提示することで、見たい面だけを取り扱い創意して真実を上塗りする人間性の顕示について褒め称えただろうか。


白人と黒人の対比はよかったのだが、ややしつこく押し出すところが気に食わず、それを語るナレーションの言葉があまりに気取るようだったからだろう。映像よりも小説としての顔がこの作品にあり、文学に対しての個人的な見解とこだわりをもっているからこそ、白人至上主義の歴史を親類から垣間見せた内容自体を、自身は見誤ってしまった作品だ。

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