前のエピソード――１２月２８日（月）広島市中区西十日市町にある食堂「ホームラン食堂」で落ち着く。

広島市安佐南区安東にある「あさ菜ゆう菜」で飲んで食べる。

今年最後の地ぐ酒ぐは「あさ菜ゆう菜」さんだ。今の時世での飲み食いは賛否が分かれる。けれど肝心なのは目にマスクをしないことで、どこがどのように危険かを見つめて把握することだろう。規則は大切だが、個人の考えもその中にあるので、社会に従って行政ばかりに文句を言うよりも、それぞれ自分の力で身近な状況に影響を与える動きも大切だ。

そんな話題も含めて「あさ菜ゆう菜」さんで色々な人と話に盛りあがった。今年踏み込んだ広島の酒と食の世界の総決算というわけではないが、裁判官らしき大御所の雰囲気にふさわしい知識と経験の豊富なお客さんと大将の会話を聞いていて、ようやく銘柄を覚えてきた自分には鱗がおちるほど、米や酒蔵に対しての天上の視点がひらかれていた。

時には辛口も飲めば、辛辣な言葉もとびかう。それを愚痴や批判とも言えるが、愛情と親しみを持っていれば、それは酒の肴としてその場限りのおいしいものになる。本に書かれるような道徳や政府が定めるルールを遵守しながらも、人情に向けて棹をさし、すこし外れるくらいが時に生きるのだ。

女将の塩むすびが隣から何度も口にころころ転がる楽しい夜は、酒も、人のあり方も勉強になる。おいしい店はすごい店、数々のトピックと料理を口にして、雨のアストラムラインにしみじみ振り返った。