12月19日(土) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで末松暢茂監督の「OLD DAYS」、橋本根大監督の「東京少女」、山口優衣監督の「雨のやむとき」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで末松暢茂監督の「OLD DAYS」、橋本根大監督の「東京少女」、山口優衣監督の「雨のやむとき」を観る。


「OLD DAYS」

2019年 54分 カラー

監督・脚本:末松暢茂

プロデューサー:山本高、袴田光

アソシエイトプロデューサー:中嶋淳志

出演:高野春樹、小田哲也、奥津裕也、菅勇毅、中村有


「東京少女」

2019年 8分 カラー

監督・脚本・撮影・編集:橋本根大

録音:飯島奈々

制作:鈴木彩音

整音:上戸幸輝

出演:柊まこ


「雨のやむとき」

2019年 28分 カラー

監督・脚本・編集:山口優衣

撮影:阿部太郎

録音:山口大雅

チーフ助監督:八木真琴

出演:滝田匠、狩野ゆま、大澤由理、向井彩恵、松田実優莉


今日は午前だけ映画を観る予定だったが、「ビューティフル、グッバイ」の質が良かったことに煽られ、午後も観ることにした。


その理由に「OLD DAYS」もあり、暴走族が登場するということで、若かりし頃に友達の家で会話に参加せず黙々と繰り返し読み続けた「特攻の拓」が刺激された。武丸や鰐淵など、“!?”が連続する魅力溢れる人物が登場する中で、一色大珠の「行けぇ! “拓ちゃん”! 悪魔の鉄槌全開! ブリバリだッ!?」というセリフに強く惹かれた。


一体どのように“ブリバリ”かわからないが、旧車と暴走族を知る教科書となったこのマンガの世界を直に感じられるほど、このドキュメンタリータッチな映画に欲望は解放された。はたからみればうるさくて迷惑きわまりないが、すぐかっとなってぶん殴り、荒々しく声を出して仲間にも遠慮なく噛みつく関係は、とてもうらやましい。ケッチの甲高いマフラー音が軽快な咆哮で走り出すと、巧みな手首さばきは馬を操るようにエンジンに手綱をきかせ、リズムよく鳥のように蛇行して傾く車体は、画面に収まると粋な飛行として自由を感じさせる。信号止め、煽り、反対車線への侵入など、道路交通法を無視した暴走行為は社会秩序を乱すが、仲間たちの関係には社会の中にあるおべっか、ごますり、上辺や陰口などない直截なぶつかりになり、昨日観た「酔いどれ天使」の三船さんと志村さんの関係のように魂が通じあう。社会のゴミなどと言われることもあり、ネット上では迷惑千万なコメントが述べられる暴走族ではあるが、ただ力の有り余る、人情と義侠心の極まった実直な人間の健全な姿ともいえる。そんな彼らの特効服やコルク半などは礼儀を持った衣装となり、三段シートのてっぺんにメットを乗せたり、にけつして股を広げ、ポケットに手をつっこんだままシートにふんぞり返る姿などは、むしろ伝統芸能と同じような形式があり、鉢巻きを頭に縛る姿などは、いなせな日本男児の伝統が宿っているだろう。個人的な思い入れが大きく評価を左右する映画で、「特攻の拓」が描く世界は実在すると“ブリバリ”を肌で感じ、過ぎ去りつつある文化に日本を誇る気持ちさえ湧く作品となっていた。


「東京少女」は、等身大の少女の思考コラージュらしく、文字表記のタイピングと移行などは疑いなくインターネットサイトからの発達となり、時折穿った見方と言葉に現代的な詩的感覚も織り込まれるようではあるが、画面の編集とタイミングによってそれとなく錯覚させる嘘くささも含まれており、皮相軽薄な調子ながら鋭い視点を持ち、それと平行してファッションや細かい感受性も現代の言葉遣いらしい謝りの言葉と敬語も混ざって表される。これを作った監督が女性なら私小説らしい雰囲気と判断するが、男性となると見方が若干変わってくる。ただ、衰退へと向かう人間の凝り固まった意見をするとなるとスピード感と時代の変化についていけず、もう一度観たいと思わないと言うが、現代の若い女性像がミクストメディアで組み合わさったようであり、個人的よりもむしろキメラのような若者の画一性が表れていると思える作品だった。


「雨のやむとき」は童話や少年コミック雑誌のようにメッセージが明確に伝わってくる作品なので、ラストに涙腺の刺激される感動がある。約30分の作品だからこそ小品としての切れ味の良さと無駄のなさが良い効果を発揮していて、学生ではあるが登場人物の性格を浮き彫りにする自然な演技を若い男女が演じている。顔立ちがはっきりしており、つい誘いたくなる可愛らしさを物語に交えるところもうまくキャスティングされている。家庭環境の違いを対比させて、その繋がりをうまく“友達”という主題で描き、目立って珍しくないからこそ、丁寧な作り方によって淡い画面ながら古風な重たさも持ち、率直に子供心が伝わってくる良作だ。


この調子で夜の上映も観たいと思えるほど刺激多い作品ばかりで、やはり今年もPFFは感性の若返りとして最適な映画を紹介している。

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