12月19日(土) 広島市中区上八丁堀にあるギャラリーGで「中野悟朗 陶展」を観る。

広島市中区上八丁堀にあるギャラリーGで「中野悟朗 陶展」を観る。


青磁の器が展示されているとSNSで知ったので、ギャラリーGへ観に行った。


いつから器を好きになったのだろう。ほんの数年前は何が良いのかわからない分野だったが、有名な土地をいくつか巡ってぐい呑みを買い、それで毎日酒を飲んでいれば、自然と自分の好みを基準とした良し悪しを持つようになるらしい。


中野悟朗さんの作品は見た目のままを受け取るなら、とにかく清冽な美しさがある。青空をさらに爽やかにしたような薄水色の肌合いはそれぞれニュアンスが異なり、やや色の濃く出ているものもあれば雲のように白く薄らいでいる部分もあり、手に持つと厚みのある器はがっしりしながら優しく柔らかい曲線を持ち、清澄な気分が伝わってくる。それでいて受け止めるおおらかさが形態にあり、山並みの持つ自然なる親しみやすさもある。


白磁と呼んでよいのかわからないクリーム色の器はもう少し落ち着いた雰囲気があり、小皿としてもう少し薄く優しい使いやすさがある。黄色の釉薬の器は一見レモンのような色合いながら、手に持つと厚みと暖かみがあり、ふと食欲をそそるカスタードクリームなども想起させる愛らしさを持ちながら、テーブルに置いて光を受けるのを観ると、それだけでない静かな深みも持っていることにはっとさせられる。


土の大きさがそのまま山を隆起させたような作品は見たとおり雄渾な存在感を盛りあがらせており、聞けば信楽の土を使い、肌合いが異なる面は成分の異なる土を上塗りしているとのことだ。


少し話をする時間が持てたので作品について訊ねると、メタリックな四角皿に黄色い点が連続している意味や、顔料を混ぜて黄色く発色させた器の思いなども知ることができ、元気の持ちにくい世の中だからこそ明るい気持ちになってもらいたいという思いもあるそうだ。


作陶地は大津で、信楽を訪れたことのない自分は地理関係がはっきりせず、琵琶湖を中心にどの場所か教えてもらうと、西側比叡山の麓あたりとのこと。十数年前に一日で琵琶湖を一周するという集まりに参加して、エアコンのない夏の軽トラックの窓から腕を出して、暑い暑い言いながら、米原から出発した車は夕方近くに西側湖畔で比叡山行きの青看板を思い出した。


そのあたりの山並みのイメージが青くも強い器に宿っているのだろう。旅行が戻ったら必ず信楽へ行ってみようと、あてにならない未来を考えてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る