12月18日(金) 広島市西区横川町にある焼き鳥店「豚鳥」のテイクアウトを食べる。

広島市西区横川町にある焼き鳥店「豚鳥」のテイクアウトを食べる。


「豚鳥」さんがテイクアウト営業をするというので買いに行った。春から初夏にかけての制限の際に他の人が買っているのは知っていたが、自分は食べることがなかったので、今回は機会を逃さずに口にすることができた。


自分の仕事の平日はさぼってばかりの肉体労働ではあるが、それでも多少なりとも重い物を持ち運び、階段を30往復ぐらい二段跳びで上り下りするので、週の終わりに近づくにつれて、肉が欲しくなる。これは好みと言うよりも、肉体が求める補給として肉を欲しており、たしかに夜にたっぷり動物を食べると次の日は体が動きやすい。胃腸に負担がかかるにしても、それ以上に肉体は快活に働くことができる。


明日の仕事のない疲れに飢えた心身は絶好のタイミングで肉を欲しており、焼鳥8本詰め合わせ1300円という数字と言葉よりも、身の詰まった串打ちの実例がいかにお値打ちものかと自身の要望を満たしてくれる。美味しいものには底なしの食欲をみせる妻でも、店の定休日三日目の仕込み後ではやや腹が苦しいらしく、すこしおこぼれをもらっても足りないくらい自分にとっては肉が肉を呼ぶ串となっている。


教えてもらった通りフライパンで分厚い串達を熱してから、次々にかぶりつく。ただし肉は刺身同様に噛みごたえがあり、モモや砂ずりなど、どれも噛めば噛むだけ味わいが広がっていく。もちろん焼きたての食感と香り良さにはかなわないとしても、炭火で焼けた香ばしさはしっかり身肉にまとわりついて、それぞれの焼け具合は一度冷めたにしても瞬間を記憶するように内部に柔らかさとみずみずしさが残っている。


肝や皮くらいは知っているが、ローリングして打たれる肉や、ホルモンらしく重ねられた串などは名称がわからず、それぞれの名前を欲してしまうほど味わいは異なる。肉ではない野菜にしても、ピーマンの甘みと厚みは存在感があり、しいたけは海産物らしいぷりっとした食感と酒を呼び込む風味がたっぷり含まれており、それは食材選びと焼き加減のなせる技なのだろう。


酒を失った分だけテイクアウトは利益につながりにくく、通常営業とは異なる予測の難しい仕込みとあっては徒労となる場合もあるだろうに。それでも完全に休むことをせずに動くことは意味があり、ただの金稼ぎと生計の為とは異なる働くことの本質を貫く姿勢は、持ち帰るどの人にも伝わることだろう。


“働かざる者食うべからず”とたびたび自分の母親は言っていたが、今日の自分は「豚鳥」さんの串を食べられる状態にあると自信を持って言える。趣味以外は怠け者であってもやはり必要に迫られて働いており、そんな労働であっても体を動かした後の食事はすこぶる身に染みるので、明日には小さくない一本一本の串の肉が体をおおいに働かせてくれるはずだ。

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