11月24日(火) 広島市中区大手町にあるおばんざい料理店「ゆすら」で飲んで食べる。

広島市中区大手町にあるおばんざい料理店「ゆすら」で飲んで食べる。


時に欲してたまらない地ぐ酒ぐの夜は鷹野橋から。


山桜桃(ゆすら)という日本酒から名をとったというこの店は、ガラス張りの壁面にスタイリッシュな内装となっていて、カウンターも天井の高さもよいものとなっている。控えめな明るさの店内には女性三人が働き、白いシャツが清潔で格好良く、この日の様は美人三姉妹となっている。


おやじが寄りつくには品格がいるだろう。むしろ女性に好まれそうな店となっていて、店の雰囲気同様に飲んだ酒はどれもきりっとしている。


白島にあるという蓬莱鶴の冷たいのは、香り良くもふくよかさがあり、後味がすっきりしている。お通しは選べて、ゴマネギ海鮮も焼きポテトサラダも海苔が香り、きゅっとタコがいる。


疑いなく良い顔をしたくなる店で、大きく笑い合うよりは、抑えのきいた声で言葉を選んでいくのが似合うだろう。とはいえ、それはあくまで店の雰囲気からのイメージで、がさつにならないくらいの親しみで和気藹々とするのが好ましい。


甘く穏やかな辛子も塩のつんとする柚子胡椒もおでんに合う。牛すじが臭みを消してだしに溶けていて、大根も冬の滋養が芯に残っている。


“すし”のように“おでん”もアルファベットで言葉を持っているのかと考えていると、台湾のセブンイレブンに話が向き、二種類用意されているとのことだ。すると、数年前に泊まりに来たアメリカ人が、“すりみ”と言っておでんを食べていたらしい。


麻婆白菜の糸唐辛子に中辛を感じてから、大七の熱燗に口を濯ぎ、皮から塩加減が広がるゴボウの天ぷらのあとに、氷見うどんでちょいと締める。きゅっと冷たいコシのある麺とつゆに清涼感があり、温かった季節の名残りを舌に思い出す。


かしこまるわけではないが、スマートながら笑顔のすてきな店だ。

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