10月30日(金) 広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで滝田洋二郎監督の「コミック雑誌なんかいらない!」を観る。

広島市中区基町にある広島市映像文化ライブラリーで滝田洋二郎監督の「コミック雑誌なんかいらない!」を観る。


1986年(昭和61年) ニュー・センチュリー・プロデューサーズ 124分 カラー 35mm


監督 : 滝田洋二郎

脚本 : 内田裕也、高木功

音楽 : 大野克夫

撮影 : 志賀葉一

照明 : 金沢正夫

美術 : 大澤稔

録音 : 杉崎喬

編集 : 酒井正次

出演:内田裕也、渡辺えり子、麻生祐未、原田芳雄、小松方正、殿山泰司、常田富士男、ビートたけし、スティービー原田、郷ひろみ、片岡鶴太郎、港雄一、久保新二、桑名正博、安岡力也


政見放送の衝撃と白髪にサングラスがアイコンらしい内田裕也さんの中年の演技は、本人と気づけない地味なリポーターとなっていた。平凡で言葉は悪いが、満員電車にいるであろうぱっとしないサラリーマンらしい風貌で、白いワイシャツのなで肩に覇気がみえない。


当時の“ロス疑惑”や“豊田商事事件”などの世相は知らないが、安岡力也さんや郷ひろみさんだけでなく、桑名正博さんやビートたけしさんなどの芸能人が登場する知ったテレビの世界があり、肩に担がれたカメラが同業者争いでもみくちゃになりながらスクープを追う画面は、小さい頃から見慣れた映像だからこそ今になっては異常に観えてしまう。


やや古い投げ方だがやけにピッチングフォームの綺麗なスローモーションが幾度か挿入され、その印象が何を意味しているかわからず夢想の意味合いかと思っていれば、その画面に登場する女性と事実らしい交際が示唆されて、ゴシップを追いかける仕事の本人が記事になるという皮肉が示される。全体にそのようなアイロニーが貫通しているので、膨れあがった社会の暗部を冒険奇譚の様相で突撃していく展開もあるが、緊密なフィクション映画の物語としての編集は乏しく、ドキュメンタリー性によって紹介していく内容はほぼカリカチュアとなっている。


鋭く切り込んで何かを暴くよりは、触れて伝える程度に留まって自身の仕事の意義を考える内容となっており、その苦悩の程度はあまり伝わってこないにしても、内田裕也さんの表情の変化は見応えがある。特に後半になればなるほど精悍な顔つきとなり、ようやく本人の内田さんに一致する顔立ちになっていく。


エンドロール後の映像の消えた中でピエロは歌われるが、今もこの先も自身がそれだと、やけにむなしさが残る最後だった。

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